監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士
学生が交通事故に遭ってしまったとき、怪我の治療だけでなく、学校生活や受験、就職への影響が心配になり、不安を感じる方も多いでしょう。
こうした不安があるときでも、【慰謝料】について知っておくと、これからの見通しが立ち、安心につながることがあります。
このページでは、交通事故の被害に遭った学生がもらえる慰謝料や、慰謝料以外に受け取れる損害賠償について解説します。
過去の裁判例も紹介していきますので、同じように悩まれている方の参考になれば幸いです。
学生の場合にもらえる慰謝料
学生であっても交通事故に遭った場合、被害の程度に応じて、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料がもらえます。
- 【入通院慰謝料】 事故の怪我で入院や通院をした場合にもらえる慰謝料です。 怪我の内容・程度や、治療期間、実際に入院・通院していた日数などによって金額が決まります。
- 【後遺障害慰謝料】治療をしても怪我の後遺症が残ってしまい、後遺障害等級が認定された場合にもらえる慰謝料です。認定された等級に応じて金額が決まります。
- 【死亡慰謝料】 被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料です。 「被害者本人への慰謝料」と「遺族への慰謝料」の2つがあり、被害者の家庭内での立場や、遺族の人数などによって金額が決まります。
交通事故の慰謝料の相場について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
交通事故の慰謝料相場について慰謝料以外に受け取れるもの
慰謝料のほかに、以下のものを受け取れる可能性があります。
- 【休業損害】 学業の他にアルバイト等での稼働もしている場合は、入通院のためにアルバイトや仕事を休み、減ってしまった収入に対する賠償を受けられます。
- 【逸失利益】 被害者に後遺障害が残った場合や、被害者が死亡した場合に、得られなくなった将来の収入に対する賠償です。
- 【治療関係費】 治療費・手術費・薬代・通院交通費・付添看護費・将来介護費など、入通院や治療にかかった費用に対する賠償です。
上記以外に、事故が原因で留年や休学した場合に発生した学費なども請求できる可能性があります。
アルバイト等での収入があれば学生でも休業損害が認められる
アルバイト等で収入を得ていた場合、学生でも休業損害が認められます。
休業損害とは、交通事故が原因で働けず、減少した収入を補うための賠償です。
学業が本業である学生の場合、一般的には休業損害は発生しないと考えられています。
もっとも、アルバイトで収入を得ていた学生が事故で働けなくなった場合、たとえ短時間の勤務であっても、実際に収入が減少したのであれば休業損害の請求が可能です。
また、事故が原因で就職が遅れた場合には、その間に得られたはずの収入相当額について、損害賠償が認められる可能性があります。
アルバイトの休業日数の出し方
休業日数は「交通事故による入通院や自宅療養のために実際に働けなかった日数」をカウントします。
勤務日が固定の場合や、シフトで勤務日がすでに決まっていた場合は、実際にアルバイトを休んだ日が休業日数です。
一方、シフトが未確定だった場合は、過去の勤務実態(直近3ヶ月)を参考に、平均的な稼働日数を割り出して休業日数としてカウントする方法があります。
なお、医師の指示や症状との関連性が認められない休業日は、対象とならない場合があるため注意しましょう。
アルバイトの休業損害の計算方法
アルバイトの休業損害は、会社員などと同じように【1日の収入額×休業日数】の計算式を用いて計算します。
算定基準ごとに具体的な計算方法が異なるため、自賠責基準と弁護士基準で比較してみましょう。
- 自賠責基準:日額6100円×休業日数 1日あたりの収入額が6100円を上回ることを証明できれば、日額1万9000円を上限に実収入をベースに計算されます。
- 弁護士基準:1日あたりの基礎収入額×休業日数 1日あたりの基礎収入額は「事故前3ヶ月間の給与合計額÷事故前3ヶ月間の実稼働日数」などで計算します。
請求には休業損害証明書・源泉徴収票が必要
休業損害を請求する場合、休業損害証明書と源泉徴収票を保険会社に提出する必要があります。
- 【休業損害証明書】 休業損害証明書は、交通事故が原因で働けなかった日付や日数を証明するための書類です。相手方保険会社から書類を取り寄せて、必ずアルバイト先に作成してもらいましょう。
- 【源泉徴収票】 給与の裏付けとして、事故前年度の源泉徴収票を提出します。 源泉徴収票が用意できない場合は、雇用契約書、事故前3ヶ月分の給与明細や賃金台帳の写しなどで代用が可能な場合があります。
学生の後遺障害逸失利益は高額になりやすい
学生はこれから長い期間にわたって働くことが見込まれるため、後遺障害逸失利益が高額になる傾向があります。
後遺障害逸失利益とは、事故による後遺障害がなければ将来得られたはずの収入のことです。
例えば、「手足が動かしにくい」「視力や聴力が低下した」などの後遺障害により、仕事の選択肢や働き方に影響が生じることがあります。
学生は事故当時に収入がなくても、将来就職して収入を得ることが前提となります。
年齢や学歴、平均賃金などをもとに将来の収入を算定し、適正な後遺障害逸失利益を請求することが大切です。
学生の逸失利益の基礎になる収入はどうやって計算するの?
実際の収入がない学生の場合、後遺障害逸失利益の基礎になる収入は「予測される将来の収入」を用いて計算します。
具体的には、厚生労働省が毎年公表している「賃金センサス」という平均賃金に関する統計資料をもとに、男女計や男女別の全年齢平均賃金を基礎収入として用いるのが一般的です。
大学に進学する可能性が高い場合には大卒の平均賃金、就職先が決まっている場合は内定先の給与水準などを基準として、基礎収入が修正される場合があります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
学生の交通事故被害に関する裁判例
交通事故の被害者が高校生だった場合の裁判例
【昭55(ワ)57号 宇都宮地方裁判所 昭和56年9月18日判決】
<事案の概要>
17歳の男子高校生がバイクで走行中、左折して駐車場へ進入しようとした自動車と衝突し、左肩甲骨骨折や肋骨骨折、指の切断などの重傷を負った事故です。
長期間の入院・通院を経て、左手親指・薬指の切断、左肩の著しい運動障害、骨盤変形について、後遺障害等級6級の認定を受けました。
<争点>
高校生が事故前から続けていたアルバイト収入を休業損害として認めるか、また、後遺障害が将来の仕事や収入にどの程度影響するかを踏まえ、慰謝料や逸失利益をいくら認めるべきかが争われました。
<裁判所の判断>
裁判所は、高校生が学費のために継続してアルバイトをしていたことから、高校卒業までに得られたはずのアルバイト収入約43万円を休業損害として認めました。
また、後遺障害が将来希望していた仕事にも影響するとして、逸失利益約2463万円を認定しました。
さらに、入通院と後遺障害に対する慰謝料約700万円を含めた損害額から、既払金を差し引いた約2511万円の賠償を命じました。
事故に遭った大学生に高額な逸失利益が認められた裁判例
【平22(ワ)21039号 東京地方裁判所 令和3年3月3日判決】
<事案の概要>
22歳の男子大学生がバイクで走行中、交差点に進入してきた自動車と衝突し、脳挫傷や硬膜下血腫などの重傷を負った事故です。
長期の入院やリハビリ後も、高次脳機能障害や頭部の醜状障害などが残り、後遺障害等級併合1級が認定されました。
<争点>
大学生が事故後、復学して大学を卒業していることから、後遺障害の程度や、将来収入をどのように評価するかなどが、主な争点となりました。
<裁判所の判断>
裁判所は、大学生に記憶力や注意力の低下が残り、日常生活でも家族の支援が必要な状態であると認定しました。
また、大学卒業は母親の手厚い支援があって実現できたものであり、一般的な就労は困難と判断しました。
そのうえで、大学卒業後に就職する可能性が高かったことを踏まえ、大卒男性の平均賃金を基準に、労働能力をすべて失ったものとして、逸失利益約1億1885万円を認めました。
学生の交通事故に関するQ&A
事故により入試が受けられず、入学が1年遅れました。慰謝料は請求できますか?
交通事故の影響で入試が受けられず、入学が1年遅れてしまった場合、慰謝料ではなく「休業損害」を請求できる可能性があります。
実際に、高校3年生の男子生徒が事故によって大学入学が1年遅れた事案では、「1年間就職が遅れたことによる休業損害」が認められました。
裁判所は、大卒男子の平均賃金をもとに、約322万円の支払いを認めています。
この休業損害は、後遺障害慰謝料や逸失利益とは別に認められました。
(平11(ワ)14044号 東京地方裁判所 平成13年3月28日判決)
怪我の治療のために就活を中断せざるを得ず、就職が1年遅れました。休業損害は請求できますか?
交通事故による怪我の治療のために就職が遅れた場合も、休業損害を請求できる可能性があります。
例えば、大学生が事故による長期入院のため就職できなかった事案では、就職予定日から症状固定日までの期間について、大卒男子の平均賃金を基準に、約354万円の休業損害が認定されています。
これは、事故前の学校生活の様子や、卒業が見込まれる状況から判断されました。就職活動中の学生であっても、事故と就職遅れとの因果関係を立証できれば、休業損害を請求できる可能性があります。
(平31(ワ)361号 札幌地方裁判所 令和3年8月26日判決)
交通事故で入院していたために留年してしまいました。授業料や慰謝料は請求できますか?
交通事故と留年との因果関係が認められれば、追加で負担した授業料や慰謝料を請求できる可能性があります。
実際に、事故の怪我の影響で大学を2年間留年した学生について、留年期間中の授業料約209万円が損害として認められた裁判例があります。また、復学後も十分に通学できなかった事情が、慰謝料の増額要素となりました。
ただし、事故がなくても支払う予定だった通常の授業料までは、原則として請求できません。
そのため、留年が事故による入通院のためであったことを、診断書や成績資料などで立証することが大切です。
(平14(ワ)19417号 東京地方裁判所 平成16年12月21日判決)
勉強の遅れを取り戻すために家庭教師をつけました。家庭教師代は請求できますか?
勉強の遅れを取り戻すために家庭教師をつけた場合でも、交通事故との因果関係が認められれば、家庭教師代を損害賠償として請求できる可能性があります。
過去には、事故で高次脳機能障害を負った中学生について、「家庭教師による補習を受けなければ、高校進級時に留年の可能性があった」として、約30万円の家庭教師代全額が賠償の対象となった裁判例があります。
「事故による学力低下を補うために必要だった」と示すために、領収書や支払明細に加え、成績表や学校での学習状況、補修を必要とする治療や生活の状況を具体的に示すものなど、補習の必要性が分かる資料を残しておくことが大切です。
(平10(ワ)323号 岡山地方裁判所倉敷支部 平成14年6月28日判決)
交通事故に遭われた学生の方・ご家族の方は弁護士にご相談ください
交通事故の被害は、学業や就職など、将来設計に大きな影響を及ぼす重大な問題です。
相手方の保険会社から提示された慰謝料が、適正な金額かを見極めるためにも、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人ALGには、交通事故に詳しい弁護士が多く在籍しています。
被害に遭われた学生ご本人やご家族に安心していただけるよう、一人ひとりの状況に寄り添い、丁寧にサポートいたします。
早めの対応がより良い解決につながります。今後の治療や、学業・就職への影響が心配な方は、お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)
