問題社員の解雇・雇い止め

現在の日本の法律では、雇用した社員を解雇することは容易でありません。そのため、雇用した社員に問題がある場合、適切に対処しないと当該社員を抱え続ける羽目になる、悪くすると逆に余計なコストを強いられることとなりかねません。

問題社員をどう処遇するべきか、組織から切り離すとなればどういった条件下で可能となるのか、それを知ることは組織管理上有益です。

問題社員が企業に及ぼす影響

問題社員の存在が企業に与える悪影響は、当該社員の個人的なものと、組織の中におけるものとがあります。

個人的な問題としては、単純に給与報酬に見合わないという点や、業務を行うことが却って顧客等からの悪評、クレームといったトラブルを招き、会社の利益を削ぐという点があります。

組織内での問題としては、「組織の厄介者」として人間関係を乱すことなどによる士気の下落、協調の喪失、それらによる組織の力の低下という点があります。

ともに、それが生じているということになれば、安穏と放置するわけにいかないものと言えます。

問題社員の類型

能力不足

単純に、仕事をさせられるだけの知識や技術、経験に欠けるパターンです。当該社員の人間性に特段問題がなくとも、仕事を行なえるに足る力量を備えていないのであれば、会社がおよそ利益を追求すべき組織である以上、問題社員とならざるを得ません。

ただ、社員の能力不足を示すためには、そもそも会社の側が明確な要求される能力の水準と、その評価基準を有している必要があり、また教育によって是正されるものであればそうするべきなので、不慣れや空回りを直ちに能力問題に直結させるのは危ういと思われます。

セクハラ・パワハラ

他項でも述べていることですが、セクハラやパワハラについては、今日では厳しい措置が講じられています。これらに該当する言動を行う社員を放置することは、およそ許容されない時代であると自覚するべきであり、そういった社員がいるなら更正に勤めなければなりません。

セクハラもパワハラも、仕事を行う上で不要なものであるので、生じているなら直ちにやめさせることが第一です。ただ、パワハラについては、正当な指導等と区別する明確、適切な基準を有しておく必要もあります。

職務怠慢

言うまでもないことですが、仕事の上で必要なのは、社員に才と能があることではなく、それを用いて必要な業務が行なわれ、利益が上げられていくことです。そのため、いくら人物に優れた能力があるとしても、実際の業務において怠慢なのであれば、問題社員と言わざるを得ません。

当該社員が職務怠慢の姿勢を見せる場合、元は能力ある人物なのであれば、何がかかる態度の原因となっているのかを割り出すよう努めるべきでしょう。その上で、改善が期待できるかということになります。

協調性が無い

仕事というものは一人でできるものではなく、また一人でできることなど精々知れたものです。社会において成果を上げていくためには、周囲との適切なコミュニケーションをとり、力を合わせて結果に至るための協調性を持っていることが重要であり、協調性に欠ける社員は彼自身が力を発揮できない、そして周囲の力も削ぐという両面で、会社に害を及ぼし得ることとなります。

もっとも、協調性がない人物と見受けられるとして、当人がそのことに自覚があるかどうかという点があります。自覚して他と強調しないのであれば、同人にかかる態度をとらせる原因、その改善を検討することとなるでしょう。一方、自覚なく強調しない社員である場合は、求められる周囲とのコミュニケーション、その意味合いと必要性を教え、本人が気づくことができるかが第一となるでしょう。

問題社員への対応

労働法規における労働者の保護は強く、社員に問題があるからと言って解雇や降格、懲戒などを行うことは簡単でありません。まずは個別の問題として、当該社員の抱える問題点を浮きだたせ、改善のための措置を試みることが基本線となります。

問題というものは、然るべき基準や規範への不一致、非該当と言い換えることができます。問題を問題として認識するためには、先に確たる規範や基準の存在が必要であり、それを周知、理解させることが大切です。その先に、至らない点についての改善の道のりが浮かび上がることとなります。

問題社員の出現に対して迅速的確に対応するためには、平時からきちんとした規範や基準の策定、把握を行うことが重要と思われます。そして、それにそぐわないという事実をきちんと確認、資料化できるよう、システムや必要書類を整備しておくべきと考えられます。

問題社員の解雇について

ある社員を解雇する場合は、普通解雇であれば、客観的合理的理由と、解雇が社会通念上相当として是認できるものであることが、求められます。前者の理由面においては、労働能力や適格性の欠如や喪失、勤務成績の著しい不良といったものも含まれると解されます。後者の相当性の面においては、当該社員の問題性の具体的事情の重大さ、解雇によらない是正の目途が立たないこと、労働者側の待遇又は非の程度、それらの相対的考慮によることとなります。

また、懲戒解雇の場合は、懲戒一般の原則に従い、懲戒規定の存在、当該事項への該当、処分の相当性が求められることとなります。解雇相当とするには、かなり強度の事情が必要となるでしょう。

いずれにしても、当該社員のどの点が、または何をしたことが解雇を考えざるを得ないほどの問題なのか、事実を具体的に提示できなければなりません。問題たる事実をどう認識、把握、証拠化するか、そのための仕組みを先に構築しておくことが勧められます。

問題社員の雇い止め

雇止め、すなわち有期労働契約の更新拒否については、有期労働契約は基本的に期間の満了により契約も終了するものであり、その意味のうちにおいては問題となる余地は少ないです。ただ、労働契約が反復して更新されるなど期間の定めのない労働契約と社会通念上同視しうると認められ、労働者が更新の申し込みをしている場合は、客観的道理的理由と社会通念上の相当性がある場合でなければ更新拒否を行うことができないという、解雇類似の規制がかかります。この場合は、問題社員といえども簡単に解雇できないように、雇止めが困難となります。

まず、問題社員と認められる場合は、契約をダラダラ更新するのではなく、最初の更新の機会にさっさと終了とすることです。無期同視とされるのでなければ、単なる期間満了による終了です。そうでない場合や、一定の更新後に問題が浮上した場合は、問題行動を客観的に提示できるよう資料化、教育や業務内容、配置の見直しによる解雇回避にまず務める、そういった下準備が必要となるでしょう。

雇い止めが認められやすい問題行動

雇止めに規制がかかる程度に至っていると認められうる場合に必要となる客観的合理的理由、社会通念上の相当性については、当該問題の個別具体的な内容、程度の総合的な考慮によることとなります。つまり、程度について重大であればそれだけ、回数が多ければそれだけ認められやすく、また是正の目途が立たないという点も同様です。

類型としては、対外的なトラブルを発生させる行為、パワハラやセクハラといったハラスメント系、極度の成績不良、恒常的な無断での欠勤や遅刻、早退の多発、こういったものは認められやすい傾向にあると考えられます。

能力不足を理由とした解雇・雇い止め

解雇、雇止めが問題となりうる場合や基準については、他項で述べているので、そちらをご参照ください。

能力不足と言っても、当然のように解雇や雇止めが認められるわけではありません。能力不足の事実、程度、そして改善の機会の付与の有無と、検討すべき点はあります。

まず、能力不足をいうためには、能力についての基準がなければままなりません。不足の事実は、客観的事実として提示できるよう、何等か資料化する工夫があると助けになるでしょう。また、能力不足が認められるとしても漫然と放置するのではなく、指導や教育、配置替えによる改善の努力を尽くすべきでしょう。

なお、即戦力の中途採用や専門分野を絞っての採用など、有している能力、技量が高いことを前提とした雇用であれば、能力不足を問いやすい傾向にあるとみられます。

企業に求められる解雇回避努力

日本の労働法規の下では、解雇にせよ雇止めにせよ、簡単ではありません。「ダメだから、直ちに切る。」というのは余程でないとなかなか通らず、基本的にはそれを避ける努力を行なったかが問われます。

能力不足なら然るべきトレーニング、ハラスメントなら禁止と再発防止に向けた教育などが考えられますし、原因を探った結果人間関係や業務適正にあるなら配置転換など必要な場合もあるでしょう。当該労働者本人とよく話し合うことも大事です。

これら回避の努力がみられない、不十分である場合は、解雇等が認められない可能性が高まるでしょうから、注意が必要です。

不当な解雇・雇い止めのリスク

解雇、雇止めの要件を満たさないままに実行し、結果目的を達成することができなかった場合、かえって事態が悪化することが懸念されます。当然のこと、解雇や雇止めができないこととなるので、当該問題社員を除くことができません。また、紛争間の未払い賃金についてのバックペイが必要となり、場合によっては付加金の加重も起こり得ます。そうなると、却って会社の負担が増すこととなります。

このような法的リスクのほか、実際上の面では、問題解決を達成できないことで会社が侮られ、それが当該問題社員の増長につながったり、会社との間の溝が広がることで問題がよりエスカレートしたりする恐れもあります。

このように、特に解雇や雇止めのような強力な手段を講じる場合、うまくいかないとむしろ会社の不利益として大きく跳ね返る恐れが懸念されることとなります。

不当解雇による罰則

解雇については労働基準法で罰則が定められており、業務災害休業や産前産後休業期間及びその後30日以内の解雇、法定の解雇予告や解雇予告に代わる賃金の支払いのない解雇、については6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。

一方、上記に当てはまらない解雇要件を満たさない不当解雇については、特に罰則は設けられていません。ただ、刑事上では罪に問われない場合であっても、民事上は責任を問われることはあり得ます。不当解雇は無効とされたり、損害賠償請求の対象となったりすることはあり得、基本は避けるべきものと言えます。

弁護士に依頼することのメリット

現在の日本の法律では、労働者を辞めさせることは簡単にはできません。そのため、問題ある労働者がいる場合、適宜対処しないと、その負担が延々残る恐れがあります。また、問題社員は、しばしば社内に軋轢をもたらし、周囲に負担をかけることで問題を拡大させていく恐れがあります。問題社員への対応は、迅速・的確に行う必要が高いものです。

問題社員については、まずその問題点を端的、正確に浮かび上がらせなければなりません。「説明はしづらいが、とにかく問題あると思う。」では、対処の取りようがありません。

問題社員であっても、簡単に辞めさせることはできないので、なるべくは活躍してもらうためにどうすればいいかを考えるべきでしょう。しかし、最終どうにもならないなら、辞めてもらうことも視野に入れざるを得ず、その時に向かって必要な準備を進めることも必要です。

問題社員に悩まされているのであれば、一度ご相談ください。

この記事の監修

宇都宮法律事務所 所長 弁護士 山本 祐輔
弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長弁護士 山本 祐輔
栃木県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
栃木県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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※会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません

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