監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士
交通事故に遭うと、治療が長引いて仕事や生活への影響がある場合も多いです。
そのようなときに、示談金はいくら受け取れるのかが気になる方もいるでしょう。
示談金を早く受け取れると安心できますが、今後の生活のために欠かせないお金なので、適正な金額を受け取らなければなりません。
この記事では、交通事故の示談金に含まれるものや、示談金の相場、増額させるためのポイントなどについて分かりやすく解説します。
適正な補償を受け取るための判断材料として、ぜひお役立てください。
目次
交通事故の示談金とは
交通事故の示談金とは、被害者が事故によって受けた損害を補うために、加害者側が支払う賠償金のことです。
示談金には、治療費や休業損害、逸失利益、慰謝料など、事故によるあらゆる損害をまとめて精算する役割があります。
示談が成立すると、後から追加で請求することは基本的にできません。
成立させるときには、示談金の内容と金額が妥当であるかについて見極めることが非常に重要です。不足している場合には、示談に応じてはいけません。
示談金と慰謝料の違い
示談金とは、交通事故で発生した損害をまとめて解決するための賠償金の総称です。
治療費や休業損害、逸失利益、慰謝料など、事故による損害のすべてを含みます。
一方で、慰謝料は事故による精神的苦痛への補償であり、示談金に含まれる項目の一つです。示談金は賠償の全体であり、慰謝料はその中の一部分という関係になっています。
違いを理解していれば、慰謝料だけを受け取って、相手方と示談してしまうようなミスは防げるでしょう。
示談金はいつ支払われる?
示談金は、被害者と加害者側の保険会社との示談が正式に成立してから2週間程度で支払われるのが一般的です。
ただし、治療が続いている間は損害額が確定しないため、示談を成立させることはできません。治療が完了するか、医師が症状固定と判断すると、初めて示談交渉を本格的に始めることができます。
示談交渉には、早くても2ヶ月程度かかるケースが多く、1年以上かかってしまうケースもあります。過失割合などで争っていると、支払い時期は遅くなると考えておかなければなりません。
示談金には請求期限(時効)がある
交通事故の示談金を請求する権利には消滅時効があります。
事故による影響や、加害者が判明したかによって、消滅時効の起算日と成立までの期間は変わります。また、事故日から20年が経過してしまうと消滅時効は成立します。
| 事故の種類 | 起算日 | 時効 |
|---|---|---|
| 物損事故 | 事故日 | 3年 |
| 人身事故(後遺障害なし) | 事故日 | 5年 |
| 人身事故(後遺障害あり) | 症状固定日 | 5年 |
| 死亡事故 | 死亡日 | 5年 |
| 加害者不明の事故 | 加害者が判明した時 | 3年または5年 |
交通事故の示談金に含まれるもの
| 入通院慰謝料 | 交通事故によって負った怪我を治すために、入院や通院をした苦痛や不便さなどに対して支払われる慰謝料です。入院や通院の期間や、怪我の重さなどによって算定されます。 |
|---|---|
| 後遺障害慰謝料 | 事故による怪我が完治せず、後遺障害が残った場合に支払われる慰謝料です。認定された後遺障害等級に応じて金額が決まり、等級が重いほど高額になります。 |
| 死亡慰謝料 | 交通事故によって被害者が亡くなった事実に対して支払われる慰謝料です。被害者の家庭における立場によって、慰謝料の金額が変わります。 |
| 治療関係費 | 入院費や薬代、入院雑費など、治療に必要となる実費のすべてが含まれます。症状に応じて必要となる装具代や、リハビリ費用なども請求できます。 |
| 後遺障害逸失利益 | 後遺障害によって労働能力が低下し、将来得られたはずの収入が減少する場合に補償されます。後遺障害等級や年齢、収入などから計算されます。 |
| 死亡逸失利益 | 死亡事故の場合、その後の将来収入が失われたことに対する補償です。被害者が生きていれば得られたはずの収入から、生活費、中間利息などを控除して計算されます。 |
| 休業損害 | 事故による怪我が原因で仕事を休んだ期間に、減ってしまった収入を補償するものです。会社員や自営業者だけでなく、専業主婦(主夫)でも請求できます。 |
| その他 | 通院のための交通費、付き添いが必要な場合の付添看護費、車いすなどの介護用品費、家事代行費など、事故に伴って必要となった費用が幅広く含まれます。 |
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の示談金の相場
| 状況 | 示談金相場 |
|---|---|
| 死傷者のいない物損事故 | 数万~数百万円程度 |
| 他覚所見のないむちうちなど、軽症の人身事故 | 数十万~100万円程度 |
| 完治する人身事故 | 数十万~200万円程度 |
| 後遺障害が残る人身事故 | 数百万~数億円程度 |
| 死亡事故 | 数千万~1億円程度 |
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故により怪我を負って、治療や入院、通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛の補償をするための慰謝料です。
支払われる金額は、通院期間や実通院日数、怪我の程度などを基準に算定されます。
このとき、用いられる基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)によって大きな差が生じます。
弁護士基準は最も高額になるケースが多いため、適正な慰謝料を受け取るためには、基準の違いを理解しながら交渉しなければなりません。
| 通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1ヶ月 | 8万6000円 | 軽傷19万円/重傷28万円 |
| 2ヶ月 | 17万2000円 | 軽傷36万円/重傷52万円 |
| 3ヶ月 | 25万8000円 | 軽傷53万円/重傷73万円 |
| 4ヶ月 | 34万4000円 | 軽傷67万円/重傷90万円 |
| 5ヶ月 | 43万円 | 軽傷79万円/重傷105万円 |
| 6ヶ月 | 51万6000円 | 軽傷89万円/重傷116万円 |
軽い接触事故だった場合の示談金相場は?
軽い接触事故では、1週間程度で完治する場合が少なくないため、示談金は数万円程度と少額になるケースが多いです。
ただし、これは本当に擦り傷や軽度の打撲しかなかったときの話であり、本当はむちうちなどの怪我があっても気づいていないケースもあります。
交通事故に遭ったら、外傷がなくても、一応受診しましょう。
本当に軽い怪我しかなければ、通院1日となって、通院による慰謝料は自賠責基準で4300円×2=8600円が目安となります。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故による怪我が完全には治らず、労働能力の一部や全部を失うほどの後遺障害が残った場合に支払われる慰謝料です。
後遺障害は1〜14級まで等級が定められており、等級が重いほど慰謝料は高額になります。
用いられる基準によって慰謝料の金額は大きく異なり、特に弁護士基準では数百万〜数千万円に達するケースもあります。
将来にわたって続く不自由への補償として非常に重要なので、適正な等級に認定してもらわなければなりません。
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級 | 1650万円(1600万円) | 2800万円 |
| 2級 | 1203万円(1163万円) | 2370万円 |
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級 | 1150万円(1100万円) | 2800万円 |
| 2級 | 998万円(958万円) | 2370万円 |
| 3級 | 861万円(829万円) | 1990万円 |
| 4級 | 737万円(712万円) | 1670万円 |
| 5級 | 618万円(599万円) | 1400万円 |
| 6級 | 512万円(498万円) | 1180万円 |
| 7級 | 419万円(409万円) | 1000万円 |
| 8級 | 331万円(324万円) | 830万円 |
| 9級 | 249万円(245万円) | 690万円 |
| 10級 | 190万円(187万円) | 550万円 |
| 11級 | 136万円(135万円) | 420万円 |
| 12級 | 94万円(93万円) | 290万円 |
| 13級 | 57万円 | 180万円 |
| 14級 | 32万円 | 110万円 |
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が亡くなった場合に、被害者本人の精神的苦痛と、遺族が受けた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。金額は、自賠責基準では請求権者の人数や、被害者に扶養されている者がいたかに応じて定められています。
弁護士基準では被害者の家庭内での立場によって大きく異なり、被害者本人が一家の支柱の立場であった場合には高額になります。
死亡事故では、慰謝料だけでも高額になることが多いです。
【自賠責基準】
自賠責基準の死亡慰謝料は、被害者本人の慰謝料が定められています。
それに加えて、請求権者の人数に応じて一律の金額が加算されるのが特徴です。
被害者に子供などの被扶養者がいる場合には、追加で200万円が加算されます。
| 被害者本人 | 400万円 |
|---|---|
| 請求権者が1人 | +550万円 |
| 請求権者が2人 | +650万円 |
| 請求権者が3人以上 | +750万円 |
| 被扶養者がいる場合 | +200万円 |
【弁護士基準】
弁護士基準の死亡慰謝料は、被害者の家庭内での立場を重視して算定されます。
被害者が一家の支柱であった場合や、母親・配偶者であった場合には、どちらでもない場合と比べて金額が大きく加算されます。自賠責基準より高額となるのが一般的です。
| 一家の支柱 | 2800万円 |
|---|---|
| 母親、配偶者 | 2500万円 |
| その他 | 2000万~2500万円 |
積極損害
積極損害とは、交通事故によって実際に発生した支出を補償するための損害項目です。
治療費や自宅での介護費、通院交通費、診断書代、入院中の雑費、装具・コルセット・松葉杖などの購入費、看護師の付添費用など、事故がなければ発生しなかったはずの実費を幅広く含みます。
被害者が重傷を負った事故では、費用が高額になることも多いため、請求漏れが起こりやすく、適切に請求できていないケースが少なくありません。
領収書がなくても、事故との因果関係が認められる支出であれば補償される可能性があることに注意しましょう。
後遺障害が残る場合には、将来において必要となる高額な治療費や介護費用が認められることもあるため、専門的な判断が必要となる可能性が高いです。
消極損害
消極損害とは、交通事故に遭わなければ将来得られたはずの収入が失われたことによる損害です。
代表的なものとして、治療や後遺障害によって働けなくなった期間の休業損害や、死亡や後遺障害が残った場合に将来の収入が減少、喪失する逸失利益が挙げられます。
失われた将来の収入は、被害者の今後の生活に直結する重要な補償項目です。
収入についての正確な資料や、後遺障害等級を正しく認定してもらうことが、適正な金額を受け取るための鍵となります。
休業損害
休業損害とは、交通事故が原因で仕事を休まなければならず、その結果として収入が減ってしまった場合に請求できる損害賠償です。
会社員や自営業者だけでなく、専業主婦(主夫)も家事労働が経済的価値を持つと評価されるため請求できます。
休業日数や事故前の収入を基に算出されますが、保険会社から提示される金額が実際の損失に見合わないケースも少なくないので、収入を証明するための資料を十分に揃えましょう。
休業損害について知りたい方は、以下の記事で解説しているのでご覧ください。
休業損害について詳しく見る逸失利益
逸失利益とは、交通事故による後遺障害や死亡が原因で、将来得られたはずであった収入が失われたことに対する補償です。
後遺障害の場合には、後遺障害等級によって労働能力の喪失率が定められており、これを基に「基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」で計算します。
適正な等級認定と基礎収入の証明によって、被害者の将来の生活を守ることができます。
逸失利益について知りたい方は、以下の記事で解説しているのでご覧ください。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の示談金シミュレーションツール
交通事故の示談金は、怪我の重さや後遺障害の等級、過失割合など、さまざまな要素で大きく変わります。そこで役に立つのが、示談金を試算できるシミュレーションツールです。
治療期間や等級などを入力するだけで、おおよその受取額の目安が分かり、示談交渉の準備に役立ちます。
特に「過失0」のケースでは、どの程度の金額が期待できるのかを把握しやすく、保険会社の提示額が妥当かについて判断する材料になります。
損害賠償金の計算ツールを使いたい方は、以下のリンク先でご利用ください。
交通事故の示談金を増額させる4つのポイント
完治または症状固定まで治療を受け続ける
交通事故に遭ってからの治療は、自己判断によるのではなく、原則として医師が治療の必要がないと判断するまで続けましょう。
途中で通院をやめてしまうと、十分に治っていなくても怪我は軽かったと評価されるおそれがあります。怪我が軽く扱われると、慰謝料や休業損害などが減額される原因になります。
また、後遺障害が残ってしまった場合には、症状固定まで治療を続けておけば、後遺障害等級の適正な認定にもつながります。
適切な示談金を受け取るために、医師の指示に沿った通院の継続が欠かせません。
適切な後遺障害等級を認定してもらう
後遺症が残った場合に十分な示談金を受け取るためには、後遺障害等級認定の申請を行って、正しい等級に認定してもらうことが不可欠です。
等級が1つ違うと、慰謝料や逸失利益の金額が大きく変わってしまいます。
そのため、医師の診断書や検査結果、痛みの経過を示す通院記録など、客観的な資料を揃えなければなりません。
申請書類の不備や説明不足などがあって、本来より低い等級だと認定されてしまうケースも多いので注意しましょう。
弁護士基準で請求する
示談金を適正な金額で受け取るためには、基本的に、弁護士基準で請求しなければならないということが最も重要なポイントです。
自賠責基準や任意保険基準に比べて、弁護士基準は慰謝料や逸失利益の金額が大幅に高く設定されているため、提示額に大きな差が生じるケースが多いです。
ただし、弁護士以外が弁護士基準で交渉しても、保険会社に認めてもらえる可能性はほとんどありません。
弁護士が介入すると、弁護士基準を前提とした交渉が可能となるため、大幅な増額が期待できる場合が多いです。
適切な過失割合で交渉する
示談交渉をするなら、過失割合を適切なものとしなければなりません。
過失割合は、示談金の金額を大きく左右します。
加害者側の保険会社は、支払額を抑えるために、被害者側の過失を実際よりも大きく評価しようとする場合があります。
そのため、事故状況を示す写真やドライブレコーダーの映像、警察の実況見分調書など、客観的な証拠によって正しい過失割合を主張することが必要です。
専門的な判断が求められる場面も多いため、不安であれば弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士介入の結果、示談金が増額した事例
本件は、依頼者が自転車で車道を走行しているときに、わき道から出てきた車両と交差点内で接触し、胸椎を骨折するなどの怪我をしてしまった事例です。
依頼者は、怪我をしてから6ヶ月程度の治療を受けました。後遺障害等級の認定を受けて、相手方の保険会社による示談金の提示が行われました。
提示額のうち、特に慰謝料と逸失利益については、保険会社独自の基準による低い金額になっていました。
そこで、私たちの弁護士が、裁判例の基準を前提としながら相手方の保険会社と交渉しました。
結果として、相手方の保険会社が慰謝料と逸失利益を裁判例に近い水準にまで引き上げたため、当初の提示額であった340万円程度から800万円程度まで、示談金を400万円以上増額することができました。
示談金を適切な額で受け取るためにも、示談交渉は弁護士にお任せください
交通事故の示談交渉では、保険会社の提示額は被害者にとって十分でないケースも少なくありませんが、適切な金額であるかを自分で見極めるのは容易ではありません。
提示額が少ない場合には、後遺障害等級を正しく認定してもらうための手続きや、過失割合の修正の要求、弁護士基準による慰謝料の請求など、多くの事項について交渉が必要となります。
弁護士法人ALGでは、交通事故の示談交渉で豊富な実績があり、大幅な示談金の増額につながった事案も数多くあります。
将来の不安を少しでも抑えるために、適正な示談金について確認し、不当な金額になっている場合には増額交渉をしなければなりません。
示談を成立させてしまう前に、ぜひ私たちにご相談ください。

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保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)
