監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士
モラハラとは、モラルハラスメントの略称で、一般的に精神的に相手を追い詰める言動のことをいいます。
精神的暴力・精神的DVともいわれ、離婚の理由のひとつとなり得ます。
配偶者のモラハラが原因で離婚を考えていらっしゃる方のなかには、離婚に応じてもらえずに悩まれている方も多いのではないでしょうか?
そんなとき重要になるのが、モラハラの証拠です。
離婚の成立に向けて有利な心証を抱かせることができる「モラハラの有効な証拠」とは、どんなものなのでしょうか?
本記事で詳しく解説していきますので、ぜひご参考ください。
目次
モラハラ加害者と離婚したい場合は証拠を用意しておく
モラハラ加害者と離婚したい場合、モラハラの証拠を用意しておきましょう。
日本では、夫婦が合意すれば離婚することができます。
ですが、モラハラ配偶者は
●そもそも自分がモラハラをしているという自覚がない
●被害者に執着している
●世間体を気にする
こうした特徴があることから、簡単には離婚に応じてもらえないことも多いです。
法律上の離婚原因があれば、相手の合意がなくても、裁判所の手続きを利用して強制的に離婚することができますが、単に配偶者からモラハラされているというだけでは、法律上の離婚原因があると認めてもらいにくいです。
そこで「配偶者のモラハラが原因で婚姻関係が破綻し、修復できない」と、証明するために、モラハラの証拠が必要になるのです。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
モラハラの証拠として有効なもの
モラハラの証拠として有効なものを6つご紹介します。
- ①日記やメモ
- ②録音・録画データ
- ③メール、LINEなどのSNS
- ④診断書や通院履歴
- ⑤第三者の証言
- ⑥警察や専門機関への相談履歴
こうした証拠から、「いつ、どこで、だれが、だれに、どんなことをして、どんな被害を受けたのか」を証明していきます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
モラハラの内容を記載した日記やメモ
モラハラの具体的な内容を、継続的に記録した日記やメモが証拠になります。
被害者自身が書いたと証明できる手書きの日記や、アクセス・閲覧制限のできるブログやSNSなど、記録手段は問いません。
追記・修正のできない手段だと、より証拠としての価値が上がります。
証拠になる日記の書き方
より有効な証拠となるよう、日記の書き方のポイントを確認しておきましょう。
- 具体的な内容を記録する
日時、場所、相手の様子、モラハラの言動など
客観的にみて、想像しやすい内容を意識しましょう - モラハラ被害を受けて感じたことを書き留めておく
精神科・心療内科の受診記録と合わせることでモラハラと症状の因果関係が認められやすくなります - 普通の日記を意識する
継続的に、家庭内・外の出来事を交えて記録することで日記の信ぴょう性が上がり、証拠から事実を認められやすくなります
モラハラの現場を録音・録画したデータ
実際のモラハラの現場を録音・録画したデータは、有効な証拠のひとつです。
無視や無反応、言葉の暴力といった言動を、ありのまま残せるため、証拠として重要視されます。
次のことを意識してデータを集めておきましょう。
- 言動の一部始終を記録する
モラハラの言動だけを部分的に記録しても、編集や改ざんが疑われます。全体の流れがわかるように、一部始終を記録してモラハラの悪質性を証明できるようにしておきましょう - 多くのデータを記録しておきましょう
モラハラが日常的に行われていることを証明するためになるべく多くのデータを残しましょう。
モラハラ夫(妻)から届いたメールや、LINEなどのSNS
モラハラ夫(妻)から届いたメールや、LINEなどのSNSも、証拠となり得ます。
特に、次のような、モラハラに該当する内容が含まれたものは、保護設定をかける、スクリーンショットを撮るなど、必ず保存しておきましょう。
- 被害者や、家族・友人の人格を否定する
- モラハラ加害者の考えを押し付け、強制してくる
- 被害者の行動を束縛・監視・制限する
医師の診断書や精神科・心療内科への通院履歴
医師の診断書やカルテ、通院履歴が証拠となることがあります。
配偶者のモラハラによって、心身の不調が生じた場合、精神科や心療内科の受診をおすすめします。
医師に、配偶者のモラハラが原因であることを伝え、具体的な内容をカルテに書き留めてもらうことで、モラハラの証拠のひとつになります。
眠れない、食欲がない、気分が落ち込む、頭痛や吐き気がするなど、モラハラによる心身の不調を感じたら、ご自身のためにも、はやめに精神科や心療内科を受診しましょう。
親族や友人等、第三者の証言
親族や友人といった、第三者の目撃証言もモラハラの証拠のひとつです。
「モラハラの相談を受けていた」という、第三者の証言が証拠となる場合もあります。
配偶者のモラハラは、おひとりで悩まず、だれかに相談して味方になってもらうと、心強く、安心です。
警察・モラハラの専門機関への相談履歴
配偶者のモラハラについて、警察や専門機関へ相談していた場合、その履歴が証拠になります。
心身への被害が深刻な場合や、子供に影響があるほど、モラハラが悪質な場合は、すぐに警察に相談しましょう。
緊急性はないけれど、不安や危険を感じている方は、警察相談専用電話#9110を利用して、相談する方法もあります。
警察以外にも、専門相談員が対応してくれる「DV相談プラス」や、被害者保護に取り組んでいる「配偶者暴力相談支援センター」などの専門機関を利用する方法もあります。
相談した警察や専門機関に対して、自己情報開示請求することで、相談履歴が取得できます。
ためらわず、有効に活用していきましょう。
証拠を集める上での注意点
どのようなものが、モラハラの有効な証拠となるのかを紹介してきました。
次に、証拠を集める上での注意点をみていきましょう。
いつでも録音できるようにしておく
いつでも録音・録画できるように、準備しておきましょう。
モラハラは突発的に行われることが多く、完璧な証拠を残すことは、なかなかむずかしいです。
スマートフォンやICレコーダーなど、常に身につけておき、モラハラがはじまりそうになったら、すぐに記録できるようにしておきましょう。
ただし、モラハラ配偶者に気付かれないよう注意が必要です。
録音状態で画面にロックをかけられるアプリや、長時間記録できるもので、録音・録画をし続けることも有効です。
データのバックアップを取っておく
証拠は、必ずバックアップを取っておきましょう。
予期せぬ不具合で、データが消失してしまうことも考えられますし、モラハラ配偶者に気付かれて、削除されるおそれもあります。
複数の媒体でバックアップを取っておくと安心です。
どうしてもモラハラの証拠が集められないときは
モラハラ被害は、見た目でわかりにくく、突発的に起こることから、証拠を集めにくいといわれます。
どうしてもモラハラの証拠が集められず、モラハラ配偶者の同意も得られない場合は、次の対処法をご検討ください。
別居する
概ね3年以上の別居期間があれば「夫婦関係が修復できないほど破綻している」と、認められ離婚が成立する可能性があります。
ただし、別居することは相手に伝えた方がよいでしょう。
※別居を伝えることで危険が及ぶ場合は、この限りではありません
弁護士に相談する
証拠の集め方や、モラハラ配偶者との交渉、裁判所の手続など被害者にとって最適な方法を提案いたします。
モラハラの証拠集めに関するQ&A
モラハラの証拠として無断で録音することは犯罪にならないのでしょうか?
基本的に、犯罪となることはありません。
モラハラ被害の証拠として、相手に無断で録音する場合、第三者に漏らすなど、データを悪用しない限り、プライバシー侵害などの違法性を問われることはありませんので、どうぞご安心ください。
日記や録音データ等の証拠は、どのくらいの期間集めると良いのでしょうか?
日記や録音データなどの証拠は、できるだけ長期間、複数の証拠を集めることをおすすめします。
日記であれば、半年以上、継続的にこまめに記録しましょう。
録音・録画データも、ただの夫婦喧嘩だと思われないように、長期間・複数回にわたって記録するとよいでしょう。
精神科や心療内科を受診する場合も、1回の受診記録より、定期的に通院した記録の方が、証拠から事実が認められやすくなる可能性があります。
ただし、身の危険を感じる場合や、子供に危険が及ぶ場合は、安全を確保することが優先です。
警察や専門機関、弁護士に相談しましょう。
子供の証言はモラハラの証拠として認められるでしょうか?
子供の年齢にもよりますが、子供の証言がモラハラの証拠として認められる可能性はあります。
まだ自分で物事の判断ができないほど年齢が低い場合は、証言の信用性が低くなりますが、証拠として扱ってもらえる可能性はあります。
もっとも、子供の年齢に限らず、子供に証言を求める場合、精神的な負担をかけないよう、最大限の注意を払いましょう。
経験豊富な弁護士がアドバイスさせていただきます
配偶者にモラハラをしている自覚がない、第三者にモラハラを証明しにくい、モラハラが起きるタイミングが掴めない、短期間の証拠ではモラハラと認められにくい、このような性質上、モラハラの証拠を集めるのは一筋縄ではいきません。
証拠を集めるためにがまんして、長期間モラハラに耐え続けて、心身を壊してしまっては本末転倒です。
モラハラの証拠を集めようとお考えの方は、なるべくおはやめに弁護士にご相談ください。
弁護士法人ALGでは、夫婦問題・離婚問題に精通した弁護士が、配偶者の言動で心を痛めていらっしゃる方の味方となって、証拠収集のアドバイスから相手との交渉まで、幅広くサポートいたします。
モラハラというのはおおげさかな?と思われる方も、まずはお気軽にお問い合わせください。
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保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)