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離婚問題

有責配偶者との離婚について

宇都宮法律事務所 所長 弁護士 山本 祐輔

監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士

夫婦関係が悪くなる原因は数多くありますが、通常はどちらか一方のみに責任が見いだされるものではなく、双方間での不協和や不一致と解されるものです。しかし、事情によっては、夫婦のどちらか一方のみに関係悪化の主たる原因が求められる場合があります。典型的には、不貞やDVが挙げられます。
夫婦関係悪化の原因を専ら作出した者からの離婚請求を容易に認めると、他方が心情的に救われない、経済的に追い詰められるといった不利益を強く被ることになり得るため、有責配偶者からの離婚請求には強い制約が課せられます。過去には、それを認めずとする時期もありましたが、今はそこまでではありません。しかし、相当長期の別居や、未成熟子がいないことなど条件があり、容易ではありません。
ここでは、有責配偶者(離婚原因を作った配偶者)について解説します。

有責配偶者とは

有責配偶者とは、夫婦間において、婚姻関係が破綻する原因を専ら作った一方当事者のことです。有責配偶者は必ず存在するわけではなく、性格の不一致や価値観の相違のような、どちらかが悪いというわけではない理由の場合は、どちらかを有責配偶者と解することは難しいです。また、お互いに不倫をした等のケースでは、夫婦のどちらも非があるということで、有責配偶者的な理解は基本されません。
有責配偶者であると認定されると、離婚を簡単には認めてもらえなくなります。そのため、離婚に際しては他方の合意を得る必要があるので、財産分与や慰謝料等で相当厳しい条件を求められても、離婚を希望するなら受け入れざるを得ないなど、不利な立場に置かれることとなります。

有責配偶者となるケース

夫婦関係の悪化、破たんにつき、その原因が専ら当人にあると解されることをすれば、有責配偶者となります。例として、配偶者以外の異性との不貞行為を行う、暴力や暴言などの振る舞いがある、生活費を家計に入れなかったり家事育児を分担しなかったりするなど共同生活に必要な役割を果たさない、こういった場合が考えられます。
もっとも、これら事情がある場合であっても、実際に有責配偶者とされるかについては、個別具体的な事情を基に判断されることとなります。

有責性を証明するための証拠

相手方の有責性を証明するためには、本人が認めているなら別ですが、第三者が見ても納得するだけ証拠が必要です。とはいえ、確実な証拠を入手するのは簡単ではありません。例えば、不貞行為の証拠を用意しようとしても、実際に不貞行為に及んでいる現場を撮影することは困難です。かといって、ただ異性と手をつないでいる写真や食事をしている写真があったとしても、それだけでは不貞行為を証明する証拠としては不十分な可能性が高いです。
不貞行為の証拠として効果的ものの例としては、相手方が自分以外の異性とラブホテル等に出入りする画像や映像、肉体関係に及んだ旨が表れているメール・LINE等の文面、ラブホテルの領収書等です。また、1つ1つは決定的な証拠でなくとも、複合的に証拠を集めることができれば、総合的に不貞行為の認定へとつながる可能性も生まれます。
不貞以外の場合についても、同様に、そのものを端的に示す記録であるほど証拠としては効果的なものとなります。

有責配偶者からの離婚請求は原則認められていない

有責配偶者からの離婚請求については、容易には認められません。他方も離婚に合意する場合には協議離婚として離婚成立が可能ですが、離婚の可否について争いとなる場合は、訴訟に至っても、厳しい条件を満たさないと請求が棄却されるだけです。
もっとも、厳しいながらも要件を満たせば、離婚請求が認められることもあります。

有責配偶者からの離婚が認められるケース

有責配偶者からの離婚請求が認められる条件は、主に3つです。

  • 夫婦の別居が両当事者の年齢や同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
  • 夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
  • 相手方配偶者が離婚によって極めて苛酷な状態におかれる等の事情が認められないこと

上記の条件は、これらに該当するか否かのみで判断されるものではなく、個別の事情が総合考慮されます。

勝手な離婚を防ぐには、離婚届の不受理申出制度を利用する

相手が有責配偶者である場合、普通にやれば簡単に離婚できないと考え、離婚届を勝手に作成して役所に提出するということがあるかもしれません。また、そこまではいかなくとも、相手の有責性を知った折などに衝動的に離婚届を記載して突き付けた場合などには、こちらはあとで冷静になって今すぐに離婚は望まないとなったとしても、相手がそれを提出して離婚が成立してしまうこともあり得ます。
離婚をそもそもしたくない、条件をきちんと定めてからでないと離婚には至れない、事情はどうであれ、こちらの意図しないタイミングでの離婚届の提出を防止したいという場合には、役所に対して離婚届の不受理を申し出ることができます。
事前に離婚届の不受理申出制度を利用しておけば、こちらの意図しない離婚届の提出を防ぎ、再構築を目指すなり、離婚の条件等についてきちんと協議するなり、進行を決めることができます。

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有責性に時効はあるか

未だ離婚が成立していない状態で有責配偶者の有責性を問うのであれば、特に時効という話にはなりません。そのため、例え何十年も前のことであったとしても、それが原因で有責配偶者だと認定されるおそれはあります。しかし、当該行為のときから最近まで時間が経過するほど、そのことと現在の夫婦関係の危機、破たんとの間のつながりが認定されづらくなり、有責配偶者とされなくなる可能性が高まります。
一方、離婚がすでに成立して、その後に相手の有責性を主張して離婚慰謝料を請求する場合は、離婚から3年で時効にかかることとなります。
なお、不貞行為等、有責性を示す事実そのものに対する慰謝料請求権は、その行為の事実を知った時から3年で時効になります(配偶者から不貞行為の相手方への慰謝料請求については、「不貞行為の事実」と「相手方が誰か」を知ってから3年です)。

どちらにも有責性がある場合の判断は?

夫婦の双方に有責性がある場合には、基本的には両成敗的にどちらも相手の有責性の享受を受けるべきではないと思われます。もっとも、個別の事情を具体的に見て、双方を相等しくそのように扱うことが不適当と思われるのであれば、有責性の処理はしつつ差引相殺的に調整をかけるという方法も考えられなくはないでしょう。
なお、不貞行為については、一方が先にそれをして夫婦関係を破たんに至らしめたのち、他方が同様に不貞を行なった場合には、判例上、先の不貞のみが責任を問われることとなる可能性が高いと思われます。

別居中の婚姻費用について

夫婦には互いに扶助の義務があるため、離婚せずに別居すると生活費を分担する義務が生じます。婚姻費用の分担です。基本的には子を監護しない側から監護する側へ、また収入の高い方から低い方へ支払うこととなります。ただし、請求者が有責配偶者である場合には事情が異なり得ます。例えば、夫婦の一方が不倫をして家を出た場合、家を出た方からもう一方へ婚姻費用を請求しても、裁判等において認められないことがあります。 なお、有責配偶者が子供を連れて家を出た場合には、婚姻費用を請求したとしても、そのうちの養育費相当額の程度のみ認められることがあります。

有責配偶者に慰謝料請求する場合の相場は?

有責配偶者が支払う慰謝料は、法定でいくらという定めがあるわけではありません。有責性を根拠づける個別の事情によって、金額は変動します。とはいえ、一般的には100万円~300万円程度の金額であることが多いと言われています。
慰謝料を請求するためには、争いとなる場合には、証拠をしっかりと確保しておく必要がある点には注意してください。

有責配偶者との離婚は弁護士に依頼したほうがスムーズにすすみます。

有責配偶者と離婚したいとお考えの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
有責配偶者に対しては、最終的には、裁判をすれば離婚が認められる可能性が高いです。しかし、裁判を用いる場合には、先に調停を申し出る必要がある等、多くの手間と時間がかかります。相手方の主張、反論に応じて、それの処理に要する時間も生じ、精神的にも経済的にも忍耐と持久力が求められることとなります。そのため、裁判も、必要やむないなら仕方ないですが、できればそこに至る前に決着を図りたいものです。
弁護士に依頼すれば、協議から訴訟まで、時間や手間と金銭その他の条件とのバランスを見つつ、依頼者がなるべく納得できるよう事件解決できる可能性も高まります。まずは、一度ご相談ください。

宇都宮法律事務所 所長 弁護士 山本 祐輔
監修:弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長
保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)
栃木県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。