離婚裁判について

離婚問題

離婚裁判について

宇都宮法律事務所 所長 弁護士 山本 祐輔

監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士

離婚がしたいけど当事者間で話し合いをしても話がまとまらない方や、離婚調停をしたけど不成立で終わってしまい次はどうしたらいいかわからない方など離婚を望むさまざまな方がいらっしゃるかと思います。離婚を求める場合には、離婚裁判という手続も存在します。離婚裁判は、協議離婚や調停離婚や審判離婚に比べると、難しい手続きとなります。こちらでは離婚裁判についてわかりやすく解説します。

離婚裁判とは

離婚したい相手と話合いができない、話合いをしたくないので、すぐに裁判をしたい、と相談に来られる方がいます。しかし、離婚事件に関しては、「調停前置主義」というものが定められており、裁判をする前には原則として家庭裁判所で調停を申し立てて、調停の場で調停委員や調査官、裁判官を交えて話合いをすることになります。調停での話合いが決裂して、調停不成立となってはじめて離婚裁判ができることになります。

離婚裁判以外の離婚方法

  • 協議離婚・・・夫婦当事者同士の話合いで離婚することをいいます。離婚の時期や条件、内容すべてを当事者同士で自由に決めることができます。
  • 調停離婚・・・家庭裁判所に調停を申し立てて、裁判所内で調停委員や調査官、裁判官を交えて話合いで離婚をすることをいいます。
  • 審判離婚・・・調停離婚で概ね離婚条件がまとまり、裁判所としても「条件をまとめて離婚したほうがいい」と考える場合に、裁判所の出す『調停に代わる審判』で離婚をすることをいいます。審判離婚の内容に不服があれば、異議を申立てることが可能です。そのため、2週間の異議申立期間の経過後、審判が確定し、離婚ができることになります。

離婚裁判で争われること

離婚裁判で争われることの主な内容は・・・・

  • 養育費・・・未成年の子供の生活全般の費用
  • 財産分与・・・婚姻中に築き上げた夫婦の財産を分け合うこと
  • 親権・・・未成年の子供の親権者を夫婦のどちらかに決めること
  • 慰謝料・・離婚に至るにあたって相手から精神的苦痛を被ったときの償いの対価
  • 面会交流・・・離婚や別居によって、子供と一緒に住んでいない父(または母)と子供が定期的に面会や電話、手紙などで交流を持つこと

などがあります。

裁判で離婚が認められる条件

裁判で離婚が認められる要件として、
民法上では
(1)配偶者に不貞な行為があったとき
(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき
(3)配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

とされています。
わかりやすく説明すると、
(1)は、浮気のことです。相手が浮気をしたら裁判離婚のできる理由となりえます。
(2)は、夫が生活費を払ってくれない、夫が家を出たまま帰ってこない、ことがあれば、裁判離婚のできる理由となりえます。
(3)は、大きな災害があって行方不明のまま三年が経った場合などが該当します。こちらは調停をせずにはじめから裁判を提起しうる事由となります。
(4)は、精神病の程度や回復の見込みに関して、専門医師の診断も必要となり、専門医師によって病状が重い、かつ回復の見込みが難しいと判断した場合に該当します。
(5)は、内容も幅広く、どのようなケースかは、限定はされていませんが、性格の不一致や、暴力・暴言、配偶者の両親との不和などさまざまな理由が挙げられます。

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離婚裁判の流れ

離婚裁判の流れは概ね以下のとおりです。
① 家庭裁判所に訴状と証拠などを提出
② 裁判所から訴状の補正の連絡があれば、都度、訂正申立書を提出する
③ 裁判所から初回裁判日の日程調整の連絡が入り、初回裁判日を決定する
④ 相手側(被告)に訴状一式と期日呼出状を送達する
⑤ 被告は裁判日の1週間前までに答弁書を裁判所に提出する
⑥ 初回裁判日実施・・・口頭弁論(初回裁判日は被告のみ答弁書を提出していれば欠席してもいいという『擬制陳述』が認められています。)訴状の陳述と証拠の原本確認をする
次回の裁判日の調整をして決定すれば、その日は終了。次回は被告の反論書面提出となる
➆ それぞれの主張や反論を繰り返し、主張が整ったら、裁判所から和解が提案される
→和解ができそうであれば、和解期日を実施して離婚成立
⑧ 和解が決裂した場合、原告被告双方が裁判所に出廷して、尋問期日を実施する
⑨ 再度、双方主張がなければ、判決言渡しとなる

離婚裁判にかかる費用について

離婚裁判には、裁判所に納める収入印紙と予納郵券が必要です。離婚をする価格は160万円と決まっていて、納める収入印紙は1万3000円です。

加えて、養育費(一人につき)、財産分与、面会交流などを求める場合はひとつ追加するごとに収入印紙は1200円追納する必要があります。養育費は、子供が二人いる場合は 2400円となります。

さらに、相手に精神的苦痛を被ったとして慰謝料を請求するならば、慰謝料の金額(50万円~300万円が相場)の訴額も上乗せします。もし、慰謝料を300万円請求するとすれば、2万円の収入印紙を追納する必要があります。予納郵券は管轄の裁判所によって違うので、問い合わせて確認しましょう。(東京家庭裁判所では6000円、大阪家庭裁判所では5000円となります。)

裁判所と訴状と一緒に夫婦の戸籍謄本が必要となります。戸籍謄本は本籍地の役場で取得することができ、450円となっています。

離婚裁判は当事者ご自身で対応するのはとても難しく、専門家の弁護士に代理人として就いてもらうのがスムーズです。その場合は、弁護士費用も発生します。

費用はどちらが負担するのか

裁判費用は、離婚裁判を提訴するときは、裁判を起こした側(原告側)が負担します。また、判決言渡後、判決内容によって、負担割合が決められます。自分が依頼した弁護士費用も相手側に支払って欲しいという方もいますが、離婚裁判においては請求できません。自分が依頼した弁護士費用は自分で支払うことになります。ただ、裁判離婚のなかの慰謝料は弁護士費用を請求することができます。請求できる費用は認定された慰謝料額の1割程度がおおよその相場となっています。

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離婚裁判に要する期間

協議離婚や調停離婚での話合いでは解決できず、離婚裁判に至った場合は争点がたくさんあることも多く、とても長引くことがあります。裁判で期日が実施される間隔は1ヶ月~2ヶ月に1回のため、事件終結までは1年弱から長い場合は3年以上かかることもあります。

最短で終わらせるためにできること

最短で終わらせるには、離婚事由になる有力な証拠を集めましょう。例えば、相手の浮気現場の写真や携帯電話のメールで明らかな証拠が揃っていれば裁判所も離婚することを早い段階で促してくれるでしょう。そのほかは、裁判上で和解を提案してくることが多いので、条件次第では和解を受け入れることも早く離婚する方法のひとつです。

長引くケース

長引くケースとして、婚姻期間が長く、財産をたくさん保有していて、財産分与が難しかったり、親権についてお互い譲れなかったりする場合などが挙げられます。財産分与では特に不動産を保有している場合に問題となりやすいです。不動産自体をふたつに分けることができないので、不動産を売却したり、不動産をどちらかの名義に変更して、不動産の価値の半分を金銭で渡したりすることなどが考えられますが、不動産を取得した側に手持ちのお金がなかった場合は金銭で渡すことができないので、支払い方法が問題となって長引くことがあります。

離婚裁判で認められる別居期間

別居をすると、婚姻期間は破綻していると判断されやすくなるため、離婚に際して別居は重要となってきます。別居期間は、長ければ長いほど離婚しやすくなることが多いですが、だいたい3年~5年ぐらいの別居期間があれば、夫婦どちらかが、離婚を拒否していても、離婚が認められやすくなることが多いです。しかし、家庭内別居や単身赴任の場合は、婚姻関係が破綻しているとは認められにくいです。家庭内別居は、実際、家庭で衣食住を別にしていても第三者からはわかりにくいですし、単身赴任も、仕事上やむを得ず、別居していると思われやすいからです。

離婚裁判の欠席について

初回裁判日は被告のみ答弁書の提出をしていれば、欠席することが認められています(擬制陳述といいます。)。被告が2回目以降も欠席する場合は、原告の主張がすべて認められる可能性が高くなります。裁判所の開廷は平日の10時~17時の間のため、仕事の都合や家庭の事情などで原告自身も欠席しなくてはいけないときも生じうるでしょう。しかし、原告側は離婚したい側なので、弁護士に依頼して代理人として出廷してもらうようにするか、裁判所と相談して、日時を変更してもらうか、電話が取れる状態であれば、電話会議に変更してもらうようにしないと、裁判が進行できず、離婚が難しくなります。

離婚裁判で負けた場合

離婚裁判に負けた場合、日本の司法では三審制となっていますので、控訴することができます。(控訴の判決に不服がある場合は上告することができます。)判決正本を受け取ってから必ず2週間以内に控訴状を提出しないといけません。判決正本を受け取って、よく考えてから1ヶ月後、2ヶ月後に控訴しよう、と思ってもできませんのでご注意ください。控訴するタイミングを間違えると、判決内容を覆すことが手続としてできなくなりますので、専門家である弁護士に相談して、控訴するのが確実でしょう。

離婚裁判のメリット、デメリット

メリット

離婚裁判をするメリットは、話合いで解決できなかったとしても、司法の力で離婚ができることです。判決正本や和解調書は、後々約束した内容を相手方が守らなかったときに強制執行ができ、相手方の給与の差押えや口座の差押えも可能です。また弁護士に代理人を依頼していれば、弁護士が裁判所に出廷してくれるので、本人が出廷する必要はありません。加えて、裁判は、自分の主張や反論は書面で提出する必要がありますが、これらも弁護士が作成して提出してくれるので、書面を全て自分で作成する手間や労力は省くことができます。

デメリット

離婚裁判をするデメリットは、時間とお金を費やすことが最大のデメリットです。また、お互いに相手の落とし合い合戦になり、強い精神的なダメージを裁判から受けることも多いです。納得のいかない内容で判決を下される場合があることもデメリットとなります。

離婚裁判についてQ&A

裁判の申し立てを拒否することは可能なのでしょうか?

離婚裁判を拒否することはできません。自分が離婚をしたくなかったとしても、相手から訴訟提起された場合は、戦うしかありません。もし、拒否をするかたちとして、裁判所から届いた書面を無視して、裁判の日に連絡もせずに行かないとなれば、請求している相手側(原告側)の主張がすべて認められることもありうるので気を付けてください。

他人が離婚裁判を傍聴することはできますか?

離婚調停は非公開となっているので傍聴は出来ませんが、離婚裁判は、ほかの損害賠償請求などの民事事件と同様、裁判は公平性を保つために基本的には公開され、誰でも傍聴ができます。離婚はとてもデリケートなプライベートのことなので、公開されるうえで争うことになる覚悟は必要です。

配偶者が行方不明でも離婚裁判を行うことはできますか?

配偶者がどこにいるかわからない場合でも離婚裁判を行うことはできます。裁判を実施するには相手方(被告)に訴状一式を特別送達(直接手渡しで配達をして、配達人が受領者と受領日時を裁判所に報告する方法)のかたちで送達し、相手方(被告)に受領してもらう必要があります。
相手方(被告)がどこにいるかわからなくても、職場がわかれば職場への送達を裁判所に上申して、特別送達で送達してもらうことも可能です。
それでも相手方(被告)に送達できない場合や職場もわからない場合は公示送達という方法もあります。
公示送達では、住民票記載の住所地を調査して、相手方(被告)が住んでいる気配がなく、色んな方法で探したが、相手方(被告)の実際の住まいがわからない、と住民票と調査報告書を添付して公示送達をするよう、裁判所に上申書を提出します。公示送達の場合は、裁判所の掲示板に書面を掲示し、2週間経ったところで、訴状が送達されたとみなされ、離婚裁判を実施することが可能となります。

離婚裁判で敗訴した場合、すぐに調停を申立ができるのか?

離婚裁判で敗訴した場合、すぐに調停を申立てすることはできますが、調停はあくまで家庭裁判所で裁判官や調停委員を交えて話合いをする場ですので、相手方(被告)が勝訴したとなると、勝訴した内容を覆すような話合いでの和解は難しいでしょう。離婚裁判で敗訴した場合は、控訴して、新たな証拠を揃えて再度争うほうが無難でしょう。

離婚後すぐに再婚することはできるのか?

男性は離婚後すぐに再婚できますが、女性は「離婚が成立した日から起算して100日を経過したあと」でなければ再婚はできないと法律で定められています。女性が妊娠して出産したときに『父親は誰なのか』を明確するために再婚できない期間があります。民法上、「離婚後300日以内に生まれた子」の父親は前夫とし、「婚姻後200日経過後に生まれた子」の父親は現夫と推定されるため、推定期間の重複を避けるために設けられています。
しかし、例外的に女性が離婚するときに妊娠していないことを証明できる場合や離婚後に出産した場合などは医師の証明書があれば離婚後100日以内でも再婚できるケースもあります。

相手が離婚を拒否し続けたら裁判でも離婚することはできない?

調停は、話合いでの離婚成立を目指す手続なので相手が拒否し続けていると離婚することは難しいですが、裁判の場合は、民法上で
(1)配偶者に不貞な行為があったとき
(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき
(3)配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
が離婚が認められる要件となるので、該当していれば離婚することは可能です。
例えば、相手が浮気をしていたことが発覚をして離婚を申し出たが、相手が離婚を拒否し続けている、というケースは離婚が認められる要件として(1)に該当しうるので判決で離婚が言い渡される可能性があります。

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離婚裁判を考えている場合は弁護士にご相談ください

離婚裁判は、主張や反論、証拠を書面で作成して提出し、争うことになります。裁判も平日の日中に実施されるので、本人の出廷は仕事の都合や家の事情があって困難な場合もあります。当事者本人で裁判をすることは可能ですが、大変手間と労力がかかります。弁護士に依頼すると、弁護士が代わりに書面を作成・提出し、裁判の日も弁護士が出廷するため、当事者本人は尋問のとき以外、出廷しなくても問題ありません。また弁護士は法律の専門家ですので、精神的に不安を抱える依頼者に寄り添い、いつでも的確なアドバイスをし、有利な裁判ができるように努めます。離婚裁判をお考えでしたら弁護士にぜひご相談ください。

宇都宮法律事務所 所長 弁護士 山本 祐輔
監修:弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長
保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)
栃木県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。