監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士
離婚調停では、配偶者本人と直接話し合うのではなく、裁判官や調停委員を介して離婚問題について、話し合いを進めていきます。
常に話をする調停委員は中立公平な立場にありますが、不利な発言をしてしまうと相手の味方につき、不利な状況に陥る可能性があります。
とはいえ、不利な発言とはどういう発言なのかよくわからない方もたくさんいるかと思います。
そこで、本記事では、離婚調停でしてはいけない不利な発言をはじめ、離婚調停で聞かれることや離婚調停を有利に進めるポイントなどを詳しく解説していきます。
目次
離婚調停でしてはいけない不利な発言
離婚調停でしてはいけない不利な発言は次のようなものがあります。
- 相手の悪口や批判
- 矛盾する発言
- 固執しすぎる発言
- 譲歩しそうだと思われる発言
- 他の異性との交際などをほのめかす発言
- 相手に直接交渉するといった発言
次項よりそれぞれ詳しく確認していきましょう。
①相手の悪口や批判
離婚調停のなかで、調停委員に相手の悪口や批判を積極的に伝えようとする方がいます。
例えば、次のような発言が挙げられます。
- 「夫は、収入が低いくせに、一切家事や子育ても手伝わず、酒ばかり飲んでいる酷い人です。」
- 「妻は、作った料理もまずいし、ガサツだし、良いところがないのです。」
といったような発言です。
しかし、調停委員は相手の悪口や批判を聞いたところで、何も判断できませんし離婚問題の解決に繋がりません。
調停委員が重視しているのは、離婚調停に至った具体的な事実や経緯です。
また、相手の悪口や批判することは、調停委員から「感情的な人だ」、「自分本位の考えしかできない人だ」などと思われて心証を悪くするおそれもありますので控えるべきです。
②矛盾する発言
一貫性のない発言をする方も、調停委員に「自分の都合のいいようにしか考えられない人だ」と良くない印象を与えてしまいます。
例えば、次のような発言が挙げられます。
- 「夫は子育てを一切手伝ってくれない」と発言したかと思えば、「子供と遊んでばかりで夫婦の会話がないのです」という
- 「夫が生活費をくれないんです」と発言したかと思えば、「夫に対して信用できないのでお金は自分が管理していて夫には小遣いを渡している」という
といったような発言です。
このような矛盾した発言を繰り返してしまうと、ご自身の主張に説得力がなくなり、離婚調停が不利にすすんでしまう可能性があります。
固執しすぎる発言
事前に離婚条件を考えておくことは大切ですが、あまりにも固執し過ぎるのはいけません。
例えば、次のような発言が挙げられます。
- 「慰謝料は絶対に300万円以上ではないと嫌です。」
- 「子供を相手に会わせたくないので面会交流をさせたくありません。」
- 「子供と離れて暮らすことになるので、毎日テレビ電話はさせて欲しい。」
などの固執し過ぎる発言です。
あまりにも固執し過ぎると、調停委員から、「調停不成立にして、離婚裁判をしたらどうですか」と勧められる可能性が高くなります。
離婚裁判は、話し合いではなく、一切の事情を考慮して裁判官が離婚について判断を下します。
よって、離婚成立までに時間がかかるうえに、不利な内容の判決を言い渡されるリスクもあります。
離婚調停で円滑に話を進めるためには、希望する離婚条件のなかで優先順位をつけて、譲れるものは譲って、柔軟な話し合いをすることをおすすめします。
④譲歩しそうだと思われる発言
離婚条件について、安易に譲歩し過ぎる発言もよくありません。
例えば、次のようなケースが挙げられます。
- 離婚慰謝料として300万円を請求しているのに、相手が100万円しか支払えないと言ってきて応じる
- 財産分与として共有財産を公平に分け合うべきところを、相手が、マイホームを含む自分名義の財産をすべて取得したいと言ってきて応じる
などといったケースです。
簡単に譲歩すると「強く押せば何でも受け入れる人だ」と調停委員に思われてしまい、積極的に相手の希望を受け入れるよう説得され、結果的に不利な内容で離婚が成立してしまい、あとで後悔することになり得ます。
不利な内容で離婚しないためにも、絶対に譲れない条件を維持したうえで、譲れる部分についてはどのような対価や配慮によって譲っていくかを考えて話し合うべきです。
⑤他の異性との交際などをほのめかす発言
他の異性との交際などをほのめかす発言もよくありません。
理論上は、離婚成立前の離婚調停中の段階でも、夫婦関係が破綻したあとの配偶者以外との交際は問題ありません。
しかし、相手は他の交際相手がいることを知ると、「夫婦関係が破綻している前から交際相手がいたんではないか」、「夫婦関係が破綻した原因が交際相手の存在なのではないか」と疑って、相手から慰謝料請求されて、離婚調停の話し合いが複雑になる可能性が高くなります。
よって、実際は他の異性と交際していても、離婚調停のなかで発言することはやめておきましょう。
⑥相手に直接交渉するといった発言
離婚調停で調停委員を介して、離婚条件を伝えても思うように進まない場合があります。
思うように調停が進まないことに焦りを感じて、相手に直接交渉するという発言をする方がいます。
例えば、次のようなケースが挙げられます。
- 面会交流の条件が整わないときに「相手に直接連絡して子供に会わせてもらいます。」という
- 親権について争いがあるときに「相手に直接、子供達は渡さないと言ったら、諦めてくれるはずです」という
などというような発言です。
本人が直接交渉を希望するのは、本人の要求が通りやすい、思い通りに相手を支配できると思っていると考えられるため、調停委員からは「この人は危険人物だ」と警戒される可能性があります。
当事者間での話し合いが難しいために離婚調停を申し立てているのですから、直接交渉するという考えや発言はもたないようにしましょう。
離婚調停で聞かれること
離婚調停で焦らずスムーズに受け答えをするためには、あらかじめ調停委員から聞かれることを想定して答えを準備しておくことが大切です。
離婚調停で聞かれることは、離婚調停を申し立てた側である「申立人」と離婚調停を申し立てられた側である「相手方」によって多少異なります。
具体的には次のような内容を聞かれる可能性があります。
聞かれる内容 | |
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申立人 | ・離婚したい理由 ・結婚した経緯 ・現在の夫婦生活の状況 ・子供に関すること ・希望する離婚条件について ・離婚後の生活について ・夫婦関係を修復できる可能性 |
相手方 | ・離婚する意思の有無 ・申立人が主張する離婚理由について ・希望する離婚条件について(離婚に同意する場合) |
離婚調停で聞かれることに関して、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
離婚調停で聞かれることについて詳しく見る離婚調停中にしてはいけない行動
離婚調停中にしてはいけない“発言”もありますが、してはいけない“行動”もあります。
主に次のような行動が挙げられます。
- 配偶者以外との交際や同棲
- 相手に直接連絡する
- 離婚調停を欠席する
- 子供を勝手に連れ去る
次項でそれぞれ詳しく確認していきましょう。
①配偶者以外との交際や同棲
離婚調停中とはいえ、まだ婚姻期間中です。
すでに婚姻関係が破綻している場合は、交際や同棲をしても不貞行為になりませんが、“まだ別居していない“、”相手が離婚を拒否している“という段階で配偶者以外の者と交際や同棲をしていると「不貞行為」にあてはまる可能性があります。
不貞行為は、夫婦間にある貞操義務に反して配偶者以外の者と肉体関係をもつことをいい、裁判上で認められる離婚事由(法定離婚事由)です。
不貞行為に該当すると、離婚の原因となった責任のある配偶者、「有責配偶者」となります。
有責配偶者からの離婚請求は基本的に認められません。
さらに慰謝料の支払義務を負うことになりかねませんので、離婚調停中の配偶者以外との交際や同棲は控えるべきです。
②相手に直接連絡する
離婚について、当事者間だけの話し合いでは解決できずに家庭裁判所を介して離婚調停にまで発展している経緯に照らすと、相手に直接連絡することは好ましくありません。
もっとも、「家に届いている郵便物を取りに行きたい」、「携帯電話の支払いが滞っているので支払って欲しい」といった事務的な連絡であれば、離婚調停中に直接連絡しても構わないでしょう。
強引に直接連絡すると、場合によっては、ストーカー規制法違反や強要罪などに問われる可能性もありますので、相手に直接連絡する行動は控えるべきです。
③離婚調停を欠席する
離婚調停を連絡無しで何度も欠席するようなことはしてはいけません。
離婚問題の解決が長引くうえに、「自分勝手な人だ」と思われ、裁判官や調停委員の心証を悪くしてしまいます。
また正当な理由もなく、離婚調停を欠席してしまうと5万円以下の過料が科される可能性もあります。
調停は平日の日中に開催されるので、仕事や家庭の都合でどうしても調停に出席できないこともあります。調停を出席できない場合は、事前に家庭裁判所の担当書記官宛てに連絡しておくようにしましょう。
④子供を勝手に連れ去る
親権を争っている最中に、子供を勝手に連れ去ってしまう事例が起こることがあります。
勝手に連れ去るという乱暴な方法をすると、裁判官や調停委員に親権者として不適格と判断されてしまうおそれがあります。
また面会交流についても希望に適う面会交流ができない可能性が高くなります。
さらに、実の子供の連れ去りであっても、未成年略取・誘拐罪に問われる可能性もあります。
したがって、子供の気持ちや健全な成長も考えずに、感情に任せて子供を勝手に連れ去るようなことはしてはいけません。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停を有利にすすめるためのポイント
離婚調停を有利にすすめるためには、自分の主張を裁判官や調停委員にしっかり伝える必要があります。
不倫やDV、性格の不一致など離婚原因は様々ですが、離婚原因について具体的な事実に基づいて話すことが大切です。できれば話しておきたいことを書面にまとめておくと言い忘れを防ぐことができます。
加えて、離婚原因を裏付ける客観的な証拠を揃えておくと、調停委員に理解してもらいやすくなり、有利に進められる可能性が高まります。
また希望する離婚条件を事前にしっかり整理して意思をしっかりと伝えると、調停委員にも希望する内容が理解してもらいやすくなります。
離婚調停で不利な発言をしないようまずは弁護士にご相談ください
多くの人にとって、離婚調停は初めての経験かと思います。
緊張してしまい、調停時に適切な対応ができずに後悔することも少なくありません。
特に思わぬ発言が不利な発言となってしまい、裁判官や調停委員が相手の味方についてしまい、不利な状況に陥ることもあり得ます。
不利な発言をしないようにまずは、弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、離婚調停に一緒に同席できますので、代わりに法的観点から説得力のある主張を代弁できますし、適切な反論を行えます。
また、事前に不利になるような言動をしないためのサポートも行います。
離婚問題について後悔しない納得のいく解決を実現するために、まずは弁護士法人ALGにお問合せください。
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保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)