監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士
近年、セックスレスを原因とした離婚や慰謝料請求が増えています。
セックスレスは、なかなか他人には相談しづらく、人知れず悩まれている方も少なくありません。
そこで今回は、ご夫婦のセックスレスについて、法的な観点から解説していきます。
「セックスレスが原因で離婚できるの?」
「セックスレスで離婚したら、慰謝料は発生するの?」
こうしたお悩みの、解決の糸口をつかむきっかけになれば幸いです。
目次
セックスレスとは
日本性科学会では、セックスレスを次のように定義しています。
「病気などの特別な事情がないにもかかわらず、合意上の性交やセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上ないこと」
一般的には、夫婦のどちらかが正当な理由なく、一方的に性愛的な触れ合いを長期間拒んでいる状態をさします。
セックスレスは離婚原因として認められるのか
セックスレスは、離婚原因として認められる可能性はあります。
夫婦の話し合いで合意できれば、どんな理由でも離婚が成立します。
一方、離婚裁判まで発展すると、セックスレスが次の法定離婚事由に該当するかどうかで、離婚の可否が判断されます。
《離婚が認められる5つの法定離婚事由》
①配偶者に不貞行為があったとき
②配偶者から悪意の遺棄をされたとき
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
セックスレスだけを理由に離婚を求める場合、5つの法定離婚事由のうち、「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当することを証明していくことになります。
セックスレスでの離婚率
ここで、セックスレスが原因の離婚率についてみてみましょう。
令和3年度の司法統計によると、裁判所に申し立てられた婚姻関係の事件のうち、セックスレスを含めた「性的不調和(性の不一致)」を動機として挙げた方は4940名でした。
これは、14種類の動機のうち第8位で、約8%を占めました。
婚姻後のセックスレスを夫婦どちらかが不満に感じ、離婚に発展するケースが少なくないことがわかります。
請求方法
セックスレスで離婚した場合、慰謝料は発生するのでしょうか?
夫婦のどちらかが求めた性交渉を、正当な理由なく、長期間故意に拒絶し続けられたことが離婚の原因となったケースでは、性交渉を拒絶した配偶者に対して、慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料の相場
セックスレスだけが原因の離婚の場合、あまり高額な慰謝料は期待できず、おおよそ0~100万円程度が相場となります。
最終的には、婚姻期間やセックスレスの期間の長さ、原因・相手の言動など、個別具体的な事情が考慮されて金額が決まります。
また、セックスレス以外に、配偶者のDVや不貞行為といった有責行為がある場合は、相場よりも高額な慰謝料が認められる可能性があります。
請求方法
①交渉
まずは当事者である夫婦で話し合います
話し合いの中で合意できれば、離婚協議書に、合意した慰謝料について記載しておきます
※強制執行認諾文言付きの公正証書にすることをおすすめします
②調停
当事者だけの話し合いで解決できない場合は、離婚調停を申し立てます
調停で合意できた場合、裁判所で調停調書が作成されます
③訴訟
調停でも解決できない場合は、離婚裁判を提起して
離婚の可否と、慰謝料の請求を行います
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
セックスレス離婚の切り出し方
なるべくセックスレスの証拠を集めてから、落ち着いて話し合えるタイミングで、離婚の意思と、セックスレスについてご自身が感じていることをはっきりと伝えましょう。
その上で、セックスレスについてどう考えているのか、相手に聞いてみましょう。
もしかしたら相手は、セックスレスで悩んでいることを知らない、あるいは、なにか特別な事情を抱えているかもしれません。
話し合うことで状況が好転し、離婚を回避できる可能性もあります。
離婚したくないと言われた場合
離婚の意思を伝えた結果、相手に離婚したくないと言われることもあります。
この場合は、無理に話し合いを続けず、一度時間や物理的に距離を置くことも方法のひとつです。
セックスレスで悩んでいることを知って、セックスレスを解消しようと、考えを改めてくれる可能性もあります。
もっとも、ご自身が、離婚する意思が強い場合には、調停の申立てや、訴訟提起を検討することになります。
別居することもおすすめです。
3年以上の別居期間があれば、法定離婚事由があるとして、離婚が認められやすくなります。
セックスレス離婚に必要な証拠
相手が離婚や慰謝料請求に応じない場合、セックスレスの証拠が必要となります。
性交渉が「ない」ことを証明するのは容易なことではありませんが、次に挙げる証拠となり得るものを、少しでも多く取得しておきましょう。
夫婦の生活時間帯などがわかる表
夫婦それぞれの生活実態が把握できる、タイムスケジュールのような表を作成して、証拠とすることがあります。
帰宅時間や就寝時間など、なるべく詳細に記録しておくことで、セックスレスの原因がタイミング的なものなのかを判断する材料になります。
セックスレスについて夫婦で話した会話の録音
セックスレスに関する会話や、性交渉を拒否された会話を録音したデータも、証拠となり得ます。
夫婦でセックスレスについて話し合うときに録音するのであれば、具体的な期間や状況が分かると、より有利な証拠になります。
録音データ以外にも、メールやLINEのやり取りも証拠となりますので、誤って削除してしまわないように、バックアップをとっておきましょう。
セックスレスのことが書かれた日記
- 相手に求めた日時
- 拒まれたときの会話
- ご自身がどう感じたのか
など、セックスレスの状況を記録した日記も、多くのケースで証拠として扱われています。
信ぴょう性を高めるためにも、継続的に事実と、ご自身の感情が記録されていると、より証拠能力が高まります。
セックスレスでの離婚でよくある質問
セックスレスで離婚した場合、子供の親権はどちらになりますか?
セックスレスが離婚原因だとしても、子供の親権に影響することは基本的にありません。
性交渉を拒否したからといって、子供の親権者にふさわしくないとはいえず、夫婦間のセックスレスと子供には、なんの関係もないと考えられるためです。
子供の親権は、子供の幸せを最優先として、これまでどのように子供と関わり養育していたか、離婚後の養育環境が整っているかなどを考慮して、父母どちらが親権者にふさわしいのかが判断されます。
セックスレスを理由に不倫された場合は離婚慰謝料を請求することはできますか?
不倫の理由がセックスレスであっても、不倫が不貞行為にあたる場合、不倫した配偶者やその不倫相手に対して、離婚慰謝料を請求できる可能性はあります。
不貞行為の証拠を集めておきましょう。
ただし、不貞行為の前に、すでに夫婦関係が破綻していた場合には、慰謝料請求が認められない、あるいは減額されてしまうのが一般的です。
妊娠中のセックスレスでも離婚できますか?
妊娠中のセックスレスだけを理由に離婚を請求しても、認めてもらえないでしょう。
妊娠中の女性は、赤ちゃんへの影響を心配して、性愛的な触れ合いを避ける傾向にあります。
また、身体の負担も大きく、そもそも性交渉がむずかしくなります。
こうした事情は、性交渉を拒む、やむを得ない正当な理由であると判断される可能性があるため、容易には離婚を認められません。
とはいえ、妊娠中や出産後のセックスレスが、離婚へと発展する可能性は少なくありません。
性交渉がむずかしくても、できる範囲でのスキンシップやコミュニケーションを心がけてみましょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
セックスレスにより離婚する場合は弁護士にご相談ください
なんの事情の説明もなく、ただ拒まれてしまうと不安になるのは当然です。
そんな状態が続けば、離婚という言葉が頭をよぎるのも、しかたがありません。
ただ、ご自身はセックスレスだと感じていても、相手はそう思っていない可能性があります。
もしかしたら、なにか言えない事情を抱えているのかもしれません。
まずは、ご夫婦でよく話し合ってみましょう。
それでも解決できない場合は、離婚するのもひとつの方法です。
セックスレスを理由に離婚や慰謝料請求をお考えの方は、一度弁護士にご相談ください。
弁護士法人ALGには、多くの夫婦問題に携わった経験豊富な弁護士が在籍しています。
なかなか他人には話しづらいと思いますが、弁護士が味方となってサポートいたします。
どうぞ安心してご相談ください。
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保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)