
監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士
交通事故による怪我で仕事ができず、収入が減る・得られない場合には、“休業損害”として加害者側に損害賠償請求できます。しかし、損害賠償請求は、基本的に賠償につき合意等で確定してから支払いを受けることができるようになるため、補償の受け取りには時間を要します。
しかし、これでは、これまでの収入を事故により得られなくなった方が、当面の生活費にも困ることとなりかねません。被害者の生活の安定を確保するためにも、休業損害はなるべく早めに支払ってもらいたいものです。
そこで本記事では、休業損害の先払いについて着目し、休業損害を先払いしてもらうための方法について、詳しく解説していきます。
休業損害を先払い(内払い)してもらう3つの方法
休業損害の先払い(内払い)を受けるには、主に以下の3つの方法が挙げられます。
- 加害者側の任意保険会社から休業損害の内払いを受ける
加害者側の任意保険会社から、示談が成立する前に休業損害の支払いを受ける方法です。
- 加害者側の自賠責保険会社に対して、被害者請求を行う
加害者側の自賠責保険会社から、休業損害の支払いを受ける方法です。
- 裁判所に対して仮払い仮処分を申し立てる
事故の被害者やその家族が生活に困窮する場合に、裁判所から加害者側に向けて休業損害の支払いを命じてもらえる方法です。
休業損害の先払い請求の方法
休業損害の先払いを加害者側の任意保険会社から受けるためには、一般的な給与所得者の場合、まず休業状況の証明として休業損害証明書などの書類を集めて提出する必要があります。なお、必要となる書類は、被害者の就労状況によって異なるため、基本的には、加害者側の任意保険会社から伝えられた書類を集めて提出するかたちとなります。
休業状況を証明するために必要な書類の中でも、休業損害証明書はとても重要です。まずは、勤務先に休業損害証明書を作成してもらい、加害者側の任意保険会社から伝えられた必要書類とまとめて提出することで、休業損害の先払いを受けられます。
では、次項にて休業損害証明書以外に必要となる書類について、詳しく解説していきます。休業損害の先払いをご希望されている方は、ぜひご参考になさってください。
任意保険への請求に必要な書類
加害者側の任意保険会社へ休業損害の先払いを請求するには、主に次のような書類が必要です。
<休業損害の先払いに必要な書類>
- 休業損害証明書
入手方法:加害者側の任意保険会社に依頼して送付してもらい、これを勤務先に提出して記載してもらいます。 - 交通事故証明書(※)
入手方法:自動車安全運転センターから取り寄せます。 - 診断書、診療報酬明細書(※)
入手方法:通院先の医師に作成してもらいます。 - 事故前年度の源泉徴収票
入手方法:勤務先から取得します。 - 事故前年度の確定申告書
入手方法:税務署に確定申告して入手します。(※)これらの書類は、既に加害者側の任意保険会社で取得している場合が多いです。
先払いの注意点
加害者側の任意保険会社から休業損害の先払いを受けることは、決して多くありません。あくまで任意で支払いを求めるため、強制できない実情があります。そのため、かならず対応してもらえるわけではないことを念頭に置いておきましょう。
また、加害者側の任意保険会社が任意で休業損害の先払いに応じてくれた場合には、最終的に受け取る賠償金から先払いされた分を差し引かなければなりません。そのような場合には、「既払い分」として計上されることが多いです。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
自賠責保険に対する被害者請求
加害者側の任意保険会社が休業損害の先払いに応じてくれない場合は、次の手段として加害者側の自賠責保険会社に対して被害者請求します。被害者請求は、被害者自身が請求手続きを行うことで、休業損害の他に治療費や慰謝料などの支払いを受けられます。
被害者請求の注意点は、支払額に120万円の限度額が設けられている点です。休業損害以外の損害賠償金の支払いも受けるため、すぐに限度額に達してしまい、継続的な休業損害の支払いを受けられない可能性が高いです。また、自賠責基準で算定されるため、実際の収入額よりも低額の支払いとなることもあり得ます。
先払い対応をしてもらえない場合の仮払い仮処分について
加害者側の任意保険会社が休業損害の先払いに応じてくれない場合に、被害者請求ではなく、裁判所に対して仮払い仮処分の申立てを行う方法があります。
仮払い仮処分とは?
「被害者が事故により減収し、生活が困窮する可能性が高い」と裁判所が判断した場合に、加害者側の任意保険会社に対して、裁判所から休業損害の先払いを命じてもらえる手続きです。
裁判所が申立てを認めた場合は、加害者側の任意保険会社に休業損害の支払義務が生じます。仮に任意保険会社が支払いに応じない場合は、強制執行による回収も図れます。なお、支払金額については、裁判所が妥当と判断した範囲内に留められますので注意しましょう。
休業損害の先払いなどが受けられず悩んでいる方は早めに弁護士にご相談ください
事故による怪我で働けずに減収を余儀なくされる方は、決して少なくありません。また、怪我の症状が落ち着いても、しばらく通院を継続しなければならず、早退や遅刻により減収される方もいらっしゃるはずです。
日々の生活を支える収入源が絶たれたままでは、事故による精神的負担は増す一方です。このような場合には、休業損害の先払いを受けて、生活費を賄う必要があります。
弁護士であれば、被害者の方に代わって、加害者側との交渉が行えます。休業損害の先払いに必要となる書類の収集や作成時のアドバイスもできるため、よりスムーズに進められるでしょう。休業損害の先払いを受けられずにお悩みの方は、お気軽に弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)