監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士
この記事をご覧のかたは、おそらく、事故に遭われて相手方保険会社に「過失割合は5:5です」と言われ、困惑されたり、疑問に思われたりしている状況なのではないでしょうか?
たしかに、交通事故の事故状況によっては、加害者と被害者の事故を起こした責任が同等の意味である「過失割合5対5」となる場合があります。
過失割合5対5の事故というのは、請求できる慰謝料や損害賠償金が、過失割合が付かない事故よりも非常に少なくなってしまう特徴があります。
そのため、相手方保険会社が過失割合5対5を提示してきたら、本当にその過失割合が妥当なのか注検討が必要です。
この記事では過失割合5対5となる事故形態や賠償金の出し方などを解説していきます。
目次
過失割合が5対5の交通事故について
過失割合とは、事故の責任(加害者)と事故の責任(被害者)を割合で表したものです。
つまり、過失割合5対5とは、損害額を計算する上で、5割分過失相殺を行うことを意味します。
以下の計算例で、被害者の受取額にどれほどの影響が出るのか見てみましょう。
5対5の賠償金の出し方
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 5 | 5 |
損害額 | 1500万円 | 3000万円 |
請求金額 | 1500万円×0.5=750万円 | 3000万円×0.5=1500万円 |
実際に もらえる金額 |
0円 | 実際にもらえる金額 0円 1500万円-750万円=750万円 |
※事故当事者の双方に5割の過失があるため、厳密にはどちらかを被害者と表現できませんが、今回は損害の大きい方を「被害者」としています。また、上記は、最後に相殺による処理を行なった場合のものです。
①加害者への請求金額は損害額から自身の過失5割を差し引きした3000万円×0.5=1500万円となります。
②被害者は加害者から請求を受けた場合、自身の過失分だけ賠償する必要があるため、被害者は加害者に対し、1500万円×0.5=750万円を支払わなければなりません。
③よって被害者が実際にもらえる金額は過失相殺により、3000万円-1500万円-750万円=750万円まで減額する可能性もあります。なお、責任保険を用いる場合は、被害者への支払いを保険で充てることにより、加害者も自身の損害の内の被害者の責任分については受け取ることができます。
実際の損害額は到底カバーできないことがお分かりいただけるでしょう。
過失割合が5対5でも「人身傷害補償特約」があれば安心?
過失割合5対5の事故の場合、「人身傷害補償特約」の利用も検討してみましょう。
人身傷害補償特約というのは、ご自身の任意保険に選んで付帯することができます。これは、過失割合に関係なく自身の任意保険から保険金が支払われるのが特徴です。
そのため、相手に請求すると損害賠償金が5割減額されてしまうところ、人身傷害補償特約を使用することで、過失割合に関係なく、契約による限度額までは特約の計算に基づく額を受け取れる可能性があります。
ただし、保険金の上限額はご自身が加入時に設定した金額の範囲内となります。また、契約時に人身傷害補償特約を付帯させていなければ当然のことながら利用することはできません。一度、契約書を確認してみたり、担当者へ連絡したりするなどして、契約内容を確認しておくといいでしょう。
過失割合が5対5になるケース
では、具体的に事故、のパターンを以下の5つに分けて過失割合が5対5となるケースを見ていきましょう。
- 自動車同士の事故
- 自動車とバイクの事故
- 自動車と自転車の事故
- 自動車と歩行者の事故
- 自転車と歩行者の事故
なお、以下でご紹介するケースは示談交渉のベースとなる「基本過失割合」です。実際の事故状況や個別の要素により修正、変動する可能性があるのでご注意ください。
自動車同士の事故
自動車事故の場合では、以下のようなケースで過失割合5対5となります。
A車とB車がそれぞれ交差道路から交差点に進入してきて衝突したケース。
直進するために、赤信号で交差点に進入したA車と、右折しようと同じく赤信号で交差点に進入したB車が衝突したケース。
ほぼ同じ幅の道路からなる交差点で、直進するA車と交差道路の左方から左折するために交差点に進入してきたB車が衝突したケース。
追い越しが禁止されていない交差点で、あらかじめ中央に寄らず右折しようとしたB車と追い越しをしようとしたA車が衝突したケース。
自動車とバイクの事故
自動車とバイクの事故の場合では、以下のようなケースが過失割合5対5となります。
ほぼ同じ幅の道路からなる交差点で、左方から自動車が、右方からバイクが同じ速度で走行してきて衝突したケース。
一方が明らかに広い交差点で、狭い道路から直進するために減速しながら交差点に進入したバイクと、広い道路から減速せずに交差点に進入してきた自動車が衝突したケース。
黄信号で交差点に進入し右折しようとするバイクと、対向車線から直進するために同じく黄信号で交差点に進入してきた自動車が衝突したケース。
赤信号で交差点を侵入しようとしてきたバイクと、黄信号で交差点に進入し赤信号で右折しようとした対向車である自動車が衝突したケース。(バイク6:自動車4とするものもあります)
ほぼ同じ幅の道路からなる交差点で、交差点を直進しようとした自動車と、交差方向の左方から右折するために交差点に進入してきたバイクが衝突したケース。
一方が明らかに広い道路で、狭い道路から直進するために交差点に進入してきたバイクと広い道路から右折するために進入してきた自動車が衝突したケース。
一方が優先道路の場合、非優先道路から交差点を直進しようとするバイクと右折するために優先道路から交差点に進入してきた車が衝突したケース。
前方の自動車が危険を防止するためにやむを得ないという状況ではないにも関わらず、急ブレーキをかけ、後方のバイクが衝突したケース。(バイク6:自動車4とするものもあります)
自動車と自転車の事故
自動車と自転車の事故の場合では、以下のようなケースが過失割合5対5となります。
正しく二段階右折をせずに、青信号で交差点を右折してきた自転車が、同じく青信号で交差点を直進してきた対向車である自動車と衝突したケース。
自動車と歩行者の事故
歩行者は最大の交通弱者となります。そのため、自動車には最も注意義務が課されることになります。
では自動車と歩行者の事故では、どのようなケースが過失割合5対5になるのでしょうか。
夜間、路上に倒れこんだり、座り込んだりしている路上横臥者と自動車が衝突したケース。
自転車と歩行者の事故
自転車と歩行者はどちらも交通弱者でありますが、相手に怪我をさせやすい自転車に、より大きな注意義務が課せられます。しかしながら、自転車と歩行者の事故であっても過失割合が5対5の同等程度になる事故形態もあります。
例えば以下のような事故形態です。
●赤信号で横断歩道付近の道路を横断する歩行者と、黄信号で右左折した自転車が衝突したケース。
駐車場内の事故は5対5になりやすい?
駐車場内の事故は相手方保険会社から過失割合5対5を提示されやすくなります。
駐車場内の事故は一般道とは異なり、基本的に道路交通法が適用されません。また、裁判例が少なかったことから、「過失割合5対5」として痛み分けとして収めようと考えられていました。
しかし、現在は基本過失割合や修正要素が整理されてきました。
示談交渉で不利にならないためにも、ドライブレコーダーの映像、防犯カメラの映像、目撃者の証言など客観的な証拠をそろえ、適切な過失割合を主張していくことが大切です。
しかし、過失割合を主張することは交通事故に詳しくなければ難しいことでしょう。そのため、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故の過失割合が5対5から変更できた事例
【事案の概要】
依頼者が駐車場内の通路を直進中、駐車区画からの側方通路より出てきた相手方車両と衝突したもの。相手方保険会社は、駐車場内での双方動きの中の事故であるとして、過失割合は5対5であると主張してきました。相談者は過失割合に不安を覚え、弁護士法人ALGに相談されました。
【担当弁護士の活動】
駐車場内で道路交通法の適用はないといえ、依頼者の走行路は駐車場外へと続く幅員もあるもので、相手方側はそれに比較すると狭路であり、依頼者走行路への接続部分には注意を促す横線が引かれていました。この状況で、また依頼者走行路は直進側に優先権があるだろうとの旨を訴え、相手方保険会社に割合の修正検討を申し入れました。
【解決結果】
最終的に、過失割合依頼者25対相手方75を相手方側に受け入れられました。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
5対5の過失割合に納得がいかない場合は弁護士にご相談ください
相手方保険会社から過失割合5対5と提示されても、その過失割合が適切ではない可能性は十分にあります。過失割合は損害賠償額に大きな影響を与えるため、自社の損失を少しでも減らそうと、被害者に大きな過失を付けている場合もあるからです。しかし、被害者の方が過失割合を修正しようと交渉しても、保険会社は交渉のプロであるため、なかなか首を縦に振ってはくれないでしょう。
しかし、過失割合に納得ができない場合は、提示された過失割合を安易に受け入れるのは避けましょう。まずは、弁護士に相談してみるのも良いでしょう。
弁護士であれば過去の裁判例を基に正しい過失割合を主張・立証していくことが可能です。過失割合が修正されれば、受け取れる損害賠償金もその分増額します。
弁護士法人ALGであれば、交通事故事案の経験が豊富な弁護士が多数在籍し、様々な解決事例も有しています。過失割合に納得ができない場合は一度私たちにご相談ください。
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保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)