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離婚問題

養育費算定表で養育費の相場を調べる方法

宇都宮法律事務所 所長 弁護士 山本 祐輔

監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士

夫婦が離婚する際、未成年のお子様の養育費について取り決めをします。
生活費・教育費・医療費といった、お子様が健全に成長するために欠かせない養育費は、父母それぞれの経済力に応じて分担し、お子様と離れて暮らす親=義務者(支払う側)から、お子様を監護・養育する親=権利者(受け取る側)に対して支払われます。
この養育費の金額を決めるにあたって用いられるのが、養育費の相場を調べるツール、「養育費算定表」です。
ここでは、養育費算定表の使い方を中心に解説していきます。
「こんなときはどうするの?」というご質問にもお答えしていきますので、ぜひご参考にしてください。

目次

養育費算定表とは

養育費算定表とは、裁判所で用いられる、月々の養育費の相場を算出するためのツールです。
子供の年齢・人数と、父母それぞれの年収に応じた、標準的な養育費の相場を求めることができます。
父母で話し合って養育費の金額を取り決める際に、目安として算定表が用いられることが多くあります。
また、裁判所の手続(調停・審判)を利用して養育費を取り決める場合にも、算定表の相場額を参考に、個別の事情を考慮して具体的な金額が検討されます。

新養育費算定表について

養育費算定表は2019年に改定され、新養育費算定表が発表されました。
この背景には、従前の算定表が提案されてから15年余りが経過していて、消費税の増税や物価上昇など、社会情勢の変化があります。
これらを踏まえ、より社会実態を反映した算定表となったことで、改訂前よりも養育費の相場が増額するケースが多くなりました。

養育費算定表の使い方

ここからは、具体的な養育費算定表の使い方を、順を追ってみていきましょう。

子供の人数と年齢を確認する

養育費算定表は、子供の人数(3人まで)と年齢(0~14歳、15歳以上)によって、使用する算定表が異なります。
対象となる子供の状況を整理しておきましょう。

裁判所のHPから該当の算定表をダウンロードする

養育費算定表は裁判所のHPで公開されていて、誰でも閲覧することができます。
まずは以下のリンクから、子供の人数(3人まで)と年齢(0~14歳、15歳以上)に応じた9つの算定表(表1~表9)から、ご自身に該当する算定表をダウンロードしてみましょう

【例】
 16歳と13歳の子供がいる場合
➡ (表4)養育費・子2人表(第1子15歳以上、第2子0~14歳)を使用

養育費算定表(令和元年版)

義務者(支払う側)の年収を確認する

養育費算定表のタテ軸から、養育費の義務者(支払う側)の年収に該当する箇所をチェックします。
なお、自営業者か給与所得者かの区分によって、年収の軸が異なるため、ご注意ください。

【例】
年収600万円(給与所得者)の場合
➡タテ軸左側、給与600をチェック

権利者(もらう側)の年収を確認する

次に、養育費算定表のヨコ軸から、養育費の権利者(受け取る側)の年収に該当する箇所をチェックします。
義務者同様、自営業者か給与所得者かの区分によって、年収の軸が異なります。

【例】
 年収75万円(給与所得者)の場合
 ➡ヨコ軸下側、給与75をチェック

2つの年収を辿り、養育費の金額を決定する

義務者の年収(タテ軸)と権利者の年収(ヨコ軸)が交差する箇所が、養育費の相場です。
算定表では、養育費に1万~2万円ほどの幅が設けられているため、交差する箇所により近い金額を相場とするのが一般的です。

【例】
 タテ軸左側の給与600と、ヨコ軸下側の給与75が交差する箇所
 ➡10万~12万円(より近いのは10万円)

養育費算定表の結果はあくまでも相場

養育費算定表で算定できるのは、あくまで標準的な養育費の相場です。
公立の小・中・高校へ進学することを前提とした教育費や、一般的な医療費など、必要最低限の費用を基準としているため、大学への進学費用や塾・習い事にかかる費用など、特別費用と呼ばれるものは考慮されていません。
そのため、必ずしも相場が適切な金額であるとは限りません。
養育費の相場に納得できない場合は、父母で話し合ってみましょう。
当事者双方が合意できれば、相場に縛られることなく、自由な金額で養育費を取り決めることができます。

養育費算定表に関するQ&A

養育費算定表以上の金額をもらうにはどうしたらいいですか?

養育費算定表よりも高額の慰謝料を受け取るためには、まずは父母で話し合います(協議)。
当事者の間で、養育費について合意が得られれば、合意内容を、強制執行認諾文言付き公正証書として残しておきましょう。
話し合いに応じてもらえない、あるいは合意が得られない場合は、家庭裁判所の調停や審判手続を利用することが考えられます。
この際、なぜ相場以上の養育費が必要なのか、根拠や証拠を示し、相手や裁判官を納得させることが重要になります。

古い算定表で金額を決めました。新養育費算定表の金額で支払ってほしいのですが、どうしたらいいですか?

養育費算定表の改定だけを理由に、すでに取り決めた養育費の増額を求めることはむずかしいです。
なぜなら、「算定表改定は、養育費を増額すべき事情変更には該当しない」と考えられているためです。
もっとも、父母双方で合意できれば、新養育費算定表をもとに、増額した養育費を受け取ることができます。
まずは当事者間で話し合ってみましょう。
当事者間で解決できない場合は、裁判所の手続を利用することになります。
この場合、算定表改定以外に、権利者の収入減少や子供の進学の都合など、増額を求める根拠と証拠が必要です。

子供に障害があるため医療費がかかります。それでも算定表の額しか支払ってもらえないのでしょうか?

子供に障害があることで、特別に医療費が必要なケースでは、養育費算定表以上の養育費が認められる可能性があります。
算定表は、子供に必要な、標準的な費用を基準としていて、子供の持病などで必要な医療費までは考慮されていません。
このように、算定表に考慮されていない、持病に関する医療費は、養育費として加算することができます。
月々の明細書・領収書などを証拠として、父母間の協議や、調停・審判手続の中で、養育費の増額を求めることになります。

新算定表の額が高すぎると調停を申し立てられました。減らさなければいけないのでしょうか?

調停で養育費の減額を求められても、必ずしも応じる必要はありません。
もっとも、調停では養育費算定表をもとに、調停委員が父母それぞれの事情をきいて解決策を提案するなどして、具体的な金額を取り決めるための話し合いが進められます。
その中で、義務者のやむを得ない収入減少や、義務者に扶養家族が増えたなど、事情の変化があると判断されると、養育費の減額が認められる可能性はあります。

再婚を理由に算定表の金額よりも養育費を減らしたいと言われました。受け入れなければいけないのでしょうか?

再婚を理由に養育費の減額が認められるとは限りません。
父母の話し合いで合意できない場合は、調停・審判手続を利用しましょう。
この際、再婚を理由として、次のような事情の変化があるケースでは、養育費の減額・免除が認められる傾向にあります。

《義務者側が再婚した場合の、事情の変化》
●再婚相手を扶養することになった
●再婚相手の連れ子と養子縁組をした
●再婚相手との間に子供が生まれた

《権利者側が再婚した場合の、事情の変化》
●十分な収入のある再婚相手と子供が養子縁組をした

子供が4人以上いる場合の養育費算定表がありません。相場はどう調べればいいでしょうか?

子供が4人以上いる場合、養育費算定表の基礎となる計算方法をもとに相場を調べることができます。
具体的な計算方法をみてみましょう。

《養育費の計算方法》
①義務者と権利者、それぞれの基礎収入を算出
基礎収入とは、年収から税金などを差し引いた金額で
「年収×基礎収入割合」で算出できます
②子供の生活費を算出
義務者の基礎収入と、親子それぞれの生活費指数を用いて、次のように算出します
「義務者の基礎収入×子供の生活費指数計÷(義務者の生活費指数+子供の生活費指数計)」
※生活費指数・・・親=100、0~14歳の子供=62、15歳以上の子供=85
③養育費の相場を算出
最後に養育費の相場を、次のように算出します
「子供の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)」

上の子を夫が引き取り、下の子2人を私が引き取ることになりました。算定表はどう見たらいいのでしょうか?

父母それぞれが子供を引き取った場合、養育費算定表だけでは、養育費の相場を求めることができません。
双方の親が子供を引き取った場合の養育費の相場を求める方法のひとつ、算定表と生活費指数を用いた計算方法をご紹介します。

まず、権利者が子供全員を引き取る(監護する)と仮定して、算定表から養育費を求めます。
その後、以下の計算方法を用いて、義務者が分担すべき養育費の相場を算出します。

「算定表の養育費×権利者が監護する子供の生活費指数計÷子供全員の生活費指数計」

算定表に書かれている年収は手取りですか?支払額ですか?

養育費算定表の年収は、手取りではなく「支払額」です。
源泉徴収票では「支払金額」、課税証明書では「給与収入」、確定申告書だと「課税される所得金額」に「実際は支出されていない費用」を加算したものが、年収に相当します。

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養育費のことでお困りのことがあれば、弁護士への相談がおすすめ

養育費算定表を使って、養育費の相場を調べる方法をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
ここでご紹介した方法は、あくまで養育費の相場・目安を求める方法です。
「お子様に持病がある」、「大学に進学する予定がある」などの個別の事情がある場合や、「お子様が4人以上いる」、「給与年収が2000万円を超える」、「父母それぞれがお子様を引き取る」といった算定表だけでは相場が調べられないケースなどで、具体的な養育費の金額を取り決めるためには、離婚問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
養育費は、お子様の成長に欠かせないものです。
少しでも不安や疑問を感じていらっしゃる方は、ぜひ一度弁護士法人ALGにご相談ください。

宇都宮法律事務所 所長 弁護士 山本 祐輔
監修:弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長
保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)
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