監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士
ご自身に離婚する意思がないにも関わらず、配偶者から離婚調停を申し立てられてどう対応したらいいか困る場合があります。
そもそも離婚を拒否することはできるのでしょうか?
離婚を拒否した場合のデメリットはあるのでしょうか?
そこで、本記事では、“離婚を拒否することはできるのか”や“拒否した場合のデメリット”など「離婚調停の拒否」に焦点をあてて、さまざまな角度から解説していきます。
目次
そもそも離婚を拒否することはできるのか
離婚の種類は主に次のとおり、「協議離婚」と「離婚調停」と「離婚裁判」の3種類があります。
協議離婚と離婚調停は、夫婦間の合意がないと離婚は成立しませんので、ご自身が離婚をしたくないのであれば、離婚は拒否することができます。
しかし、離婚裁判では、裁判上で認められている離婚事由(法定離婚事由)にあてはまれば、ご自身が離婚を拒否したくても、離婚が認められる可能性があります。
逆に言えば、法定離婚事由がないことを主張・立証して裁判所に認められると、離婚裁判でも離婚をしなくても済みます。
離婚の種類 | 解説 | 拒否の仕方 |
---|---|---|
協議離婚 | 夫婦間で話し合って離婚について合意して離婚する方法 | 相手に直接離婚拒否の意思を伝える |
離婚調停 | 家庭裁判所で裁判官や調停委員を交えて話し合いで合意して離婚する方法 | 調停委員を介して離婚拒否の意思を伝える |
離婚裁判 | 家庭裁判所が判決で離婚するかどうかや離婚条件を決める方法 | 裁判上で離婚が認められる事由(法定離婚事由)がないことを主張・立証する |
拒否が難しいケース
協議離婚や離婚調停では、ご自身が「離婚したくない」といえば、合意できませんので拒否が難しいケースはないと考えます。
しかし、離婚裁判では、裁判上で離婚が認められる事由(法定離婚事由)があると裁判所に判断されれば、離婚を拒否しても離婚が認められてしまう可能性があります。
民法上で定められている法定離婚事由は次のとおりとなります。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
具体的に離婚の拒否が難しいケースとして以下が挙げられます。
- 離婚を拒否している側に不貞行為(浮気・不倫)がある
- 離婚を拒否している側にDV・モラハラ行為がある
- 離婚を拒否している側が、働いていて収入があるのに生活費を渡さない
- 夫婦が長期間別居している など
離婚調停の拒否について
離婚調停は、あくまでも話し合いの場であり、当事者双方の合意がなければ、調停は成立しませんので、離婚を拒否することはできます。
次項では、さらに深堀りして「拒否した場合のデメリット」と「欠席する場合の連絡方法」を詳しく解説していきましょう。
拒否した場合のデメリット
家庭裁判所から申立書一式と一緒に初回調停期日を知らせる調停期日呼出状が届いたにも関わらず、離婚をしたくないからといって、離婚調停を無視した場合は次のようなデメリットがあります。
- 裁判官や調停委員の印象が悪くなる
- 5万円以下の過料が科せられるおそれがある
- 調停不成立となり、離婚裁判を提起される可能性が高くなる
- 離婚裁判に進んだ場合、不利な内容の判決を下される可能性がある
欠席する場合の連絡方法
初回調停期日は、離婚調停を申し立てた側である“申立人”と家庭裁判所の都合で日時を決めます。
また調停は平日の日中に開催されますので、どうしても仕事や家庭の都合で初回調停期日として指定された日時の都合がつかないことは起こり得ます。
家庭裁判所から送付されてきた調停期日呼出状に担当係属部と担当書記官名、事件番号、連絡先などが記載されています。
調停をやむを得ずに欠席する場合は、この記載されている連絡先に架電して、ご自身の名前と事件番号を伝え、担当書記官に繋いでもらい、担当書記官に欠席理由を添えて調停を欠席する旨を伝えればスムーズです。
離婚裁判を拒否すると離婚が成立する可能性が高くなる
離婚調停が不成立となったあとに相手から離婚裁判を提起され、離婚を拒否したいからといって離婚裁判を欠席し続けると、ご自身の意思に反して離婚が成立する可能性が高くなります。
離婚裁判では、家庭裁判所が離婚を認めるか否かの判断を下します。
ご自身が裁判を欠席し続けても裁判は進み、相手の主張に何も反論しなければ実質的に反論はないものと評価されます。
そして相手の主張・立証のみに基づいて判決の言い渡しがなされることになります。
よって、離婚請求している相手の言い分が認められ、判決により離婚が成立する可能性が高くなってしまいます。
離婚調停での財産分与の拒否はできるのか
財産分与とは、婚姻中に夫婦で協力して築き上げた財産を離婚時に分け合うことをいいます。
離婚調停では、裁判官や調停委員を交えて話し合いで離婚に関する問題を解決する手続きですので、離婚の可否と同様に財産分与についても拒否を主張することはできます。
ただし、拒否したことによって、話し合いによる解決はできないと調停委員に判断されれば調停不成立となります。
調停不成立後は、相手から離婚裁判を提起してくると考えられます。
離婚裁判では、双方の主張・立証のもとに家庭裁判所が財産分与について判断することになりますので、必ずしも、離婚の可否と同様に財産分与についても希望どおりの判決になるとは限りません。
通帳開示を拒否する場合
離婚調停で相手から通帳開示を求められても、通帳開示を拒否することは可能です。
ただし、相手が弁護士に依頼すれば「弁護士会照会」という弁護士会を通して第三者に事実を問い合わせる照会を行う手続や、「調査嘱託」という裁判所が第三者に対して調査を命じて情報を得られる手続によって、通帳開示を拒否していても、財産が開示されて明らかになってしまう可能性はあります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停の拒否に関する質問
離婚調停を拒否したら相手から別居したいと言われた場合はどうしたらいいですか?
離婚を拒否したいのであれば、別居は避けるべきです。
離婚調停が調停不成立となってから離婚裁判に進んだ場合、長期間の別居をすると、すでに婚姻関係は破綻していると判断されて、法定離婚事由のひとつである「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するとして、家庭裁判所に離婚を認める判決を言い渡される可能性が高くなるからです。
離婚調停の拒否(欠席)はいつまで通じますか?
離婚調停で「離婚したくない」と拒否する意思を示したり、離婚調停の欠席が続いたりした場合には、話し合いで離婚に関しての合意は見込めないと調停委員に判断されて、最終的に調停不成立となります。
調停不成立と判断されるのは、家庭裁判所の判断によるので、一概にいえませんが、2、3回目の調停期日が開催されたあとに調停不成立となることが多いです。
また復縁を望む場合は、離婚を拒否する側から家庭裁判所に円満調停を申し立てて、裁判官や調停委員を交えて円満な夫婦関係を回復するための話し合いをする手続もあります。
離婚調停の拒否を検討している場合は弁護士にご相談ください
配偶者から離婚調停を申し立てられたけれども、離婚を拒否したい方はまずは弁護士にご相談ください。
離婚調停はご自身だけで対応することも可能ですが、慣れない場所ということもあり、調停委員に離婚をしたくないという趣旨の内容を主張しているつもりでも、伝える内容が不足したり、伝え方を間違っていたりして調停委員に誤った捉え方をされ、思わぬ結果になるということもあり得ます。
弁護士に依頼すれば、離婚調停に一緒に出席できますので、法的観点からご自身の想いや主張を調停委員に効果的に伝えることができます。
弁護士は、離婚の成立を目指す場合だけでなく、離婚を拒否して夫婦関係の修復を目指す場合でも適切にアドバイスをいたします。
一人で抱え込まず、まずはお気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。
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保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)