
監修弁護士 山本 祐輔弁護士法人ALG&Associates 宇都宮法律事務所 所長 弁護士
面会交流は、子供と離れて暮らす親と子供が定期的に交流をもつことで、子供が「両親のどちらからも愛されている」と実感できる大切な機会です。
しかし、再婚をきっかけに、元配偶者との関係に変化が生じ、面会交流に影響を及ぼす場合もあります。
この記事では、再婚後の面会交流の必要性や再婚した側・された側それぞれが抱えるお悩みについて解説していきます。ぜひ参考にしてください。
目次
再婚しても面会交流は必要?
子供の父母どちらか、あるいは双方が再婚したとしても面会交流は必要と考えられています。
面会交流は、子供と離れて暮らす親が定期的に、直接または間接的に交流を行うことで、子供が離れて暮らす親の愛情を実感でき、心身ともに健全に成長するための重要な機会です。
面会交流は、子供の権利でもあるため、面会交流を行うことが子供の福祉(しあわせ)につながるのであれば、「再婚」だけで中止・制限することは基本的にできません。
ただし、再婚後の面会交流が、子供の福祉に適わない場合には、ルールを見直したり、制限を検討したりする必要があるでしょう。
再婚相手と子供が養子縁組した場合
子供と一緒に暮らす親が再婚し、子供と再婚相手が「養子縁組」をした場合でも、基本的に面会交流を継続する必要があります。
例えば、子供と一緒に暮らす母親が再婚し、子供が再婚相手と養子縁組をしたとします。
この場合、再婚相手は子供の養父となり、子供を扶養する義務が発生するため、子供にとって実質、父親が2人いることになります。
しかし、養子縁組をしたからといって実父と子供の親子関係がなくなるわけではありません。子供の健全な成長のためにも実父から愛されていると実感できる機会が必要です。
子供が実父との面会交流を望む場合は、それを妨げることはできません。
再婚後の面会交流を拒否したい・拒否された場合
再婚によって、「子供を元配偶者に合わせたくない」と面会交流を拒否したい方や、元配偶者から再婚を機に「もう子供に会わないでほしい」と面会交流を拒否された方もいらっしゃるでしょう。
こうした場合の対処法について、以下で詳しく見ていきましょう。
再婚を理由に面会交流の拒否は可能か
再婚を機に、「早く子供を新しい家族になじませたい」「再婚相手が元配偶者に子供を会わせるのを嫌がる」といった考えやお悩みを持つ場合もあるでしょう。
しかし、「再婚」という事情や理由だけで面会交流を一方的に拒否することはできません。
確かに、再婚後の家庭で早くなじませたいという気持ちはよくわかります。
しかし、子供の福祉の観点からは、面会交流を拒否すべき理由とは認められないでしょう。
これまで定期的に会えていた実親に会えなくなるほうが、子供の負担になると考えられます。
ただし、再婚後に面会交流をすることが子供の精神的負担になると判断できる場合や、子供自身が面会交流を拒んでいる場合には、面会交流を拒否・制限することが子供の福祉といえる場合もあります。
面会交流を拒否された場合の対処法
子供と暮らす親が再婚したことを理由に面会交流を拒否してきた場合、子供と離れて暮らす親がとれる対処法をみていきましょう。
ただし、以下で紹介する対処法は、子供が拒否していないことを前提としていますのでご注意ください。
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当事者間で話し合う
まずは面会交流の必要性などを説得し、面会交流実施に向けて話し合いましょう。 -
面会交流調停・審判
当事者間で話し合えない場合は、家庭裁判所に調停を申立て、面会交流を求めます。 -
履行勧告(裁判所の手続きを通して、面会交流の取り決めをしている場合)
家庭裁判所に申出をすると、裁判所が相手側に面会交流を履行するよう説得・勧告してくれます。ただし、法的な強制力がないため、応じてもらえないことも多いです。 -
間接強制(履行勧告に応じない場合)
具体的な取り決めがなされているにもかかわらず、守られない場合に金銭的なペナルティを課して相手が応じるように促す、強制執行のひとつです。 -
損害賠償請求
取り決めた内容を履行しないことは不法行為にあたり、この不法行為によって精神的苦痛を受けたとして、相手に慰謝料を求めることができる場合もあります。
再婚相手に慰謝料を請求することもできる
子供と一緒に暮らす親が正当な理由なく面会交流を拒否する場合で、再婚相手も一緒になって面会交流を妨げたと判断されるケースでは、子供と暮らす親だけでなく、再婚相手にも慰謝料を請求できる場合があります。
ただし、再婚相手が面会交流の妨げにどの程度関与していたのか、その悪質性など、個別事情によって判断が分かれるため、必ずしも請求が認められるわけではありません。
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再婚相手が面会交流に同席したいと言ってきたら
再婚後、子供との面会交流に再婚相手が同席したいと言ってくるケースも少なからずあります。
こうしたケースではどのように対応すべきでしょうか。
以下で注意点を踏まえて詳しく見ていきましょう。
子供の意思を最優先に考える
面会交流は子供の権利でもあるため、何より重視すべきことは子供の意思です。
まずは子供の意見を聞いてみましょう。その際、子供の本心に耳を傾けるようにしましょう。
子供は親が思っている以上に周りを見ています。
「実親とだけ面会交流したいけど、そう言ったらがっかりさせちゃうかな」と本当の気持ちを伝えられない子供もいるでしょう。
そのため、子供の本心をしっかりと理解することが重要です。口で言ったことだけで判断せず、本当はどう思っているかな?と話してみてください。
そして、子供が再婚相手の同席を望んでいない場合は、子供のしあわせを優先して、実親だけの面会交流にしましょう。
面会交流調停を申し立てる
父母間で問題が解決できない場合は、家庭裁判所の調停手続きを利用しましょう。
調停は、調停委員を間に挟んだ話し合いで問題の解決をはかる手続きです。
当事者は交互に調停委員に自分の意見を主張したり、相手の意見を聞いたりします。お互いが顔を合わせることがないため、冷静に話し合いが進められるでしょう。
調停では必要に応じて、家庭裁判所調査官という子供や家庭問題の専門家による調査が行われます。こうした調査の結果、子供の福祉・利益(しあわせ)を優先とした解決をはかります。
調停での解決が難しい場合は、自動的に審判に移行し、裁判所による決定が下されます。
面会交流調停について再婚後の面会交流に関するQ&A
再婚を理由に面会交流の回数を減らすことは可能ですか?
再婚だけを理由に面会交流の回数を減らすことは難しいでしょう。
しかし、再婚後に面会交流を行うことで、子供が新しい家族になじめず精神的ストレスになっているなど、悪影響を及ぼす場合には、子供への影響を考慮して面会交流の頻度や方法を見直したり、一時的に制限をしたりといった対処法が求められます。
父母間の話し合いや調停手続きなどを利用して、どうすることが子供にとって最善なのかを慎重に検討することが重要です。
元夫が面会交流に再婚相手を連れてきていることが判明しました。一人で会わないなら面会交流を拒否したいのですが可能ですか?
面会交流に再婚相手を連れてくることで、子供が面会交流を楽しめない、ストレスを感じている、面会交流を嫌がるようになったなど、子供に悪影響を及ぼす場合には、元夫に再婚相手を連れてこないでほしい旨を伝えましょう。
その際、子供の思いを伝えると良いでしょう。
話し合っても元夫が再婚相手を連れてくる場合には、面会交流を拒否することも検討しましょう。まずは「面会交流調停」を申し立て、再度、面会交流のルールを取り決める必要があります。
子供が元妻の再婚相手に懐いています。子供のためにも会わない方がいいですか?
子供が元妻の再婚相手になついていても、あなたが子供の実父であることに変わりはありません。まずは子供の意思を確認しましょう。
子供があなたとの面会交流を楽しみにしているのであれば、たとえ再婚相手に懐いていたとしても面会交流を継続すべきでしょう。
養父に懐いているとはいえ、子供の実の父親はあなただけです。また、実父としての愛情をあげられるのもあなただけなのです。
養父と実父それぞれから愛情をもらいながら成長することは、子供にとって素晴らしいことでしょう。
再婚し、子供が生まれたので新しい家庭に集中したいです。面会交流の拒否はできるのでしょうか。
子供が面会交流を望むのであれば、継続すべきでしょう。
子供と一緒に暮らしている側か、離れて暮らしている側かでさまざまな状況はあるかと思いますが、「子供が生まれた」という理由で面会交流を拒否するのは親の事情や理由でしかありません。
面会交流は子供の権利でもあります。
子供が離れて暮らす親との交流を望むのであれば、これまで通り面会交流を実施し、子供に愛情を持っていることを示してあげてください。
とはいえ、子供が生まれて、家庭に集中したいお気持ちはよくわかります。
突然面会交流を拒否するのではなく、徐々にほどよい距離感が取れるように面会交流の頻度や方法を見直してみてはいかがでしょうか。
再婚後の面会交流で疑問点があれば弁護士に依頼してみましょう
再婚後の面会交流については、どのように進めるべきか、そもそも面会交流を行うべきか悩まれることも多くあると思います。
しかし、面会交流は子供の権利でもあり、子供が両親のどちらからも愛されていると実感できる大切な機会です。再婚後も面会交流を行うためにも、状況によって面会交流の頻度やルールを見直す必要があるでしょう。
再婚後の面会交流については、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは離婚問題や夫婦問題に詳しい弁護士が多数在籍しております。ご相談者様のご事情に沿った解決に至るよう尽力いたしますので、まずは一度お話をお聞かせください。
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保有資格弁護士(栃木県弁護士会所属・登録番号:43946)